オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子ym3のマッピング

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要約

ym3をもつオオムギ縞萎縮病抵抗性品種「イシュクシラズ」と罹病性ビールオオムギ品種「交A」のF2を既存のRFLPマーカーを用いてym3をマッピングすると、ym3は染色体5HのRFLPマーカ-ABG705とCDO749との間に座位する。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・育種工学研究室、サッポロビール植物工学研究所、科学技術振興財団、九州大学
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:植物バイテク、生物資源・生物工学
  • 専門:分子育種
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子ym5の育種選抜においては、ym5に近接するエステラーゼを分子マーカーとして早期に選抜することがすでに実用化されている。しかし、わが国のオオムギ縞萎縮病原因ウイルスの全ての系統に抵抗性を示すym3は染色体2Hに座位する情報があるものの、これに近接する分子マーカーが開発されていない。そのため、すでに公開されているオオムギRFLPマーカーを用いて、ym3に近接するRFLP(制限酵素断片長多型)マーカーを探索する。

成果の内容・特徴

  • オオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子ym3をもつオオムギ品種「イシュクシラズ」と罹病性ビールオオムギ品種「交A」を交配親とするF2集団153個体、F3系統1系統当たり30個体を供試し、RFLP検出に制限酵素6種類(BamHI,BglII,DraI,EcoRV,HindIII,XbaI)を使用した。
  • 既存の公開RFLPマーカーである、米国コーネル大のDr.Sorrellsから分譲された北米オオムギゲノムマッピングプロジェクトのNABGMPマーカーと、またドイツのDr.Granerから分譲されたRFLPマーカーのうち、染色体2H、染色体5H上のRFLPマーカーを使用した。
  • F2の各個体からCTAB法で抽出したゲノムNA5μg/レーンに対して、RFLPマーカーを非アイソトープ標識(DIG法)したプローブでサザンハイブリダイゼーション分析し、RFLPマーカーのF2集団(153個体)内での分離を調査した。
  • 遺伝子連鎖分析はMAPMAKER2.0を用い、最小LODを3.0と設定した。
  • ym3の縞萎縮病抵抗性は単一遺伝子座によって決定されていると推定でき(データ省略)、その遺伝子座ym3は染色体2Hではなく染色体5Hの短腕に座位し、ABG705とCDO749との間に、11.7cMと5.4cMの距離で連鎖する(図1)。

成果の活用面・留意点

  • ym3と近接するRFLPマーカー、ABG705とCDO749はym3を間接選抜する分子マーカーとして育種選抜に利用できる。
  • ABG705とCDO749を入手する場合は北米ワシントン大学のDr.Kleinhofsへ分譲依頼する。
  • 実用にあたっては、育種母本におけるABG705とCDO749のRFLP検定が必要である。

具体的データ

図1 本実験で得られた結果(左)とNABGMP(右)による染色体5HのRFLPマップ
図1 本実験で得られた結果(左)とNABGMP(右)による染色体5HのRFLPマップ

 

その他

  • 研究課題名:ゲノムサイズの大きい作物における非アイソトープ法による高感度遺伝子分析法の確立.金属ストレス分子応答に関する遺伝子制御解析
  • 予算区分 :交流共同研究・経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成6~12年)