ルジグラス培養細胞内及び、アルミニウムと互作用する蛋白質

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

亜熱帯牧草ルジグラスの培養細胞は酸性耐性を示し、また酸性条件下でアルミニウムが高効率で細胞内に取り込まれ、アルミニウムの一部は蛋白質と相互作用する。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・育種工学研究室、生産環境部・上席研究官、科学技術振興事業団、東京大学
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:生物資源・生物工学
  • 専門:環境生理
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

わが国は酸性土壌が広く分布し、オオムギ、コムギ、ダイズなどの主要作物は生育阻害を受ける。一方亜熱帯牧草のルジグラスは酸性土壌で生育が旺盛であり、土壌中の酸性とアルミニウムストレスにより生育を亢進させる機構を持つことが推定されている。しかし、アルミニウム耐性機構を分子レベルで解明するために再現性の良い実験系が確立されていない。以上から、酸性耐性を示し、酸性条件でアルミニウムを細胞内に取り込む細胞培養系を確立し、アルミニウムの細胞内でのタンパク質に関する動態を解明する。

成果の内容・特徴

  • ルジグラス完熟種子由来のカルスをうらごしで小細胞塊とし、1/2MS培地で細胞培養すると、通常条件(pH5.8)に比べて酸性条件(pH3.5から4.5)では、細胞の重さを2倍にするために要する時間は約1/2であり,また培養後25日後ではその最大重量は通常条件より大きい(図1)。
  • ルジグラス細胞を1日間pH4.0で培養すると、26アルミニウムは細胞内に高効率(投与した26アルミニウムの約2%)で取り込まれる(図2)。
  • 細胞内に取り込まれた26アルミニウムを未変性蛋白質電気泳動分析し、電気泳動ゲルを分画し、それぞれに含まれる26アルミニウム量をタンデム質量分析用加速器で測定すると、蛋白質と相互作用したアルミニウムのピークがいくつか示される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • アルミニウム耐性機構を、細胞レベルで解明する系として利用できる。
  • 蛋白質の抽出、分析時には、蛋白質分解酵素阻害剤のPefablocSC(1mg/ml)とchymostatin(20μg/ml)を添加する必要がある。

具体的データ

図1 異なる培養pH条件下におけるカルス増殖
図1 異なる培養pH条件下におけるカルス増殖

 

図2 26アルミニウムのカルス培養細胞への取り込み
図2 26アルミニウムのカルス培養細胞への取り込み

 

図3 ルジグラスカルス細胞内のタンパク質分画が結合している超微量アルミニウム量の加速器分析
図3 ルジグラスカルス細胞内のタンパク質分画が結合している超微量アルミニウム量の加速器分析

 

その他

  • 研究課題名:アルミニウム過剰ストレス下における植物バイオシステム(生物圏)の分子応答解析
  • 予算区分 :原子力・経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)