打ち込み式湛水土中点播直播栽培における水稲育成系統「西海238号」の直播適性

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要約

水稲の代かき同時土中点播直播において、育成系統「西海238号」はヒノヒカに比べ出芽性および耐倒伏性に優れ、また遅播きでも出穂期、成熟期ともに早いので、稲・麦二毛作における湛水直播栽培の播種期幅拡大に優れた適性を有する。

  • 担当:九州農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム、水田利用部・稲育種研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合研究、水田作
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

湛水土中直播では出芽性や耐倒伏性の向上が技術確立の重要な柱となっており、出芽率の向上や耐倒伏性の強化技術が鋭意検討されている。一方、近年消費者からは良食味米に対する要望が強く、生産現場ではこれに対応するため、直播適性のあまり高くない良食味品種を導入する場合が多い。その結果、出芽不良や倒伏による生産の不安定性が顕在化しており、早急に湛水直播適性の高い品種選定や育成が必要とされる。本研究では、ヒノヒカリと良食味早生系統の「西海238号」とを供試し、出芽性、耐倒伏性および遅播きでの出穂・成熟期の遅延等を比較し、麦後湛水直播栽培における西海238号の直播適性を解析する。

成果の内容・特徴

  • 湛水土中点播直播における播種後の落水条件において、西海238号はヒノヒカリに比べ出芽速度が速い。播種後の湛水条件では両者の違いが顕著になる(図1)。
  • 湛水土中点播直播における西海238号の倒伏程度(0~4までの5段階表示)は、平成11年におけるような強い台風に見舞われた年でも0.5程度であり、窒素の施肥法にかかわらず小さい。またヒノヒカリに比べ倒伏指数(小さい値のほうが倒伏しにくい)が小さく、特に窒素施用量の少ない条件では、押倒し抵抗値が極めて大きい(表1)。
  • 湛水土中点播直播(平成11年)において、西海238号はヒノヒカリに比べ播種時期が遅い6月22日播きでも出穂期で4日、成熟期で7日早いことから、登熟期間の気象条件が好条件となり、収量が低下しにくい。従って、暖地の稲・麦二毛作体系における湛水直播の播種期幅拡大に優れた適性を有する(表2)。
  • 移植栽培における3年間の平均値で比べると、西海238号の食味(総合評価値)はヒノヒカリとほぼ同等である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 試験は細粒灰色低地土で行った結果である。
  • 出芽試験は平成11年に人工気象室(摂氏20度恒温)で角型ポットに、鳩胸状態まで催芽し乾籾重の2倍量の酸素発生剤で被覆した籾を播種して行った。

具体的データ

図1.出芽率の推移

 

表1.湛水土中点播直播における倒伏関連形質

 

表2.湛水土中点播直播における収量および収量構成要素等

その他

  • 研究課題名:稲・麦の省力二毛作技術の体系化、麦後における湛水直播適応性系統の選定
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成11年度(平成9~13年、「適応性系統の選定」課題は11年で繰り上げ完了)