早播き適応性のめん用早生小麦新品種「イワイノダイチ」

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要約

イワイノダイチは、暖地・温暖地に適応する秋播性程度IVの早生で、茎立期が遅いため早播き適応性があり、短稈で耐倒伏性が強い。穂数がやや多く、千粒重が重く、多収である。縞萎縮病に強く、うどんこ病にやや強く、穂発芽耐性はやや強い。高製めん性系統で、福岡県で準奨励品種、大分県で認定品種に採用予定である。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・麦育種研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:総合農業(作物生産)、水田作
  • 専門:育種
  • 対象:麦類
  • 分類:普及

背景・ねらい

暖地における小麦作では、収穫期の雨害回避及び水稲との作業競合回避のため、早生品種が求められており、これまでにも多くの早生品種が普及に移されている。しかし、現在普及している早生品種は、播性I~IIの春播型のために暖冬年では茎立が早すぎ、凍霜害や分げつ不足のため収量が低下しやすい。これらの問題を解決し、収量及び品質の安定を図るため、秋播性が高い早生品種の開発を図った。

成果の内容・特徴

この系統は、めん用として育成した秋播性が高い早生種で、農林61号に比較して次のような特徴がある。

  • 播性はIV、茎立ちは遅く、出穂期で5日、成熟期で4日早い早生種である。
  • 稈長は10cm短く、耐倒伏性は強い。
  • 褐ぷで、穂長はやや長く、穂数はやや多い。
  • 千粒重は重く、収量は多い。容積重はやや重く、外観品質は良好である。
  • 赤かび病、うどんこ病に強く、赤さび病にはやや弱い。穂発芽耐性はやや強い。
  • 製粉歩留は同程度で、原粒及び60%粉灰分は低い。
  • 原粒及び60%粉粗蛋白質含量は同程度かやや低い。
  • 60%粉の粉色は、白さ、明るさともやや低い。
  • アミログラムの最高粘度は高く、ブレークダウンは大きい。
  • めんの色、粘弾性及びなめらかさに優れる。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は温暖地・暖地の平坦地である。
  • 秋播型のため早播き適性があり、播種適期幅が広い。
  • 分げつ数が多いので厚播きを避け、適正量を播種する。
  • 耐倒伏性は強いが、極端な多肥栽培は避ける。
  • 穂発芽耐性はやや強いが十分ではないので、適期収穫に努める。

具体的データ

表1 イワイノダイチの特性

その他

  • 研究課題名:暖地向け極早生安定多収小麦品種の育成
  • 予算区分:麦緊急開発、新用途畑作、高品質輪作、経常
  • 研究期間:平成11年度(昭和62~平成11年)