ヒノヒカリの湛水土中点播栽培における分げつ特性からみた穂数確保条件

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要約

暖地におけるヒノヒカリの湛水土中点播栽培において、適正苗立数の時に収量を移植水稲並み以上とするのに必要十分な穂数を確保するためには、主稈第2葉からの1次分げつを確実に出現させ、その有効化を図る必要がある。

  • 担当:九州農業試験場・水田利用部・栽培生理研究室
  • 連絡先:0942-52-3101
  • 部会名:水田作
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

暖地におけるヒノヒカリの湛水土中点播栽培では、条間30cm、株間20cmとした時の適正苗立数は70~80本/m2(4~5本/株)とされている。一方、移植水稲並みの収量を得るためには必要十分な籾数が必要であり、そのためには400本/m2程度の穂数を確保する必要ある。そこで、上記苗立数の場合に必要穂数を確保するための条件を分げつ特性の面から明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 点播様式水稲で分げつの出現が期待できる節位は、ワグネルポット条件下では28の1次分げつとそれに対応する2次分げつであり、この中でほぼ確実に有効化するのは1次分げつの234だけである。また,有効化しやすい分げつは5621223132である(図1)。
  • 圃場条件下においても、初発1次分げつが2の場合は、上記のワグネルポット条件下と同様に、1次分げつの234はほぼ確実に有効化する。5621223132も有効化するがその割合はポット条件に比べると低い(図2)。
  • 初発1次分げつが3あるいは4となった場合、有効化する1次分げつは、その節位が上位に動くものの総数には大差がない。しかし、有効化する2次分げつ数は初発1次分げつ節位が上位になるほど少ない(図2)。
  • 初発1次分げつが2の時は必要十分な穂数と籾数が確保されるが、初発1次分げつ節位が34と上位になるにつれて、穂数および籾数は順次減少する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 出芽・苗立ちが遅れると2分げつが出現しない場合が多いので、種子予措に留意するとともに、播種後の適正な管理によって速やかな出芽・苗立ちを図る必要がある。
  • 6月上旬播種、8月下旬出穂の作期におけるデータである。
  • 本情報では、鞘葉の次の「不完全葉」を第1葉とし、主稈を「0」、主稈の第2葉節から出た分げつを「2」、その第1葉節から出た分げつを「21」と表記した。

具体的データ

図1 分げつの出現と有効化が期待できる節位(ポット条件,1996~98年)

 

図2 圃場条件下における有効茎の出現位置(1998,99年)

 

表1 初発1次分げつ節位の違いによる穂数,籾数の差異(1998,99年)

その他

  • 研究課題名:(1)暖地水稲における分げつ構造と分げつの有効化との関係解明.(2)打ち込み点播水稲の最適生育パターンの形態形成的解明
  • 予算区分:(1)経常、(2)総合的開発研究(次世代稲作)
  • 研究期間:平成11年度((1)平成8~11年、(2)平成10~12年)