暖地向けリポキシゲナーゼ完全欠失だいず新品種「エルスター」

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要約

だいず「エルスター」は子実の青臭みに関与するリポキシゲナーゼの全てを欠失しており、風味・食味の良好な新規大豆加工食品素材として利用でき、子実重、子実粗蛋白含有率が「フクユタカ」と同等で暖地に適する。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・大豆育種研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:総合農業(作物生産)、畑作
  • 専門:育種
  • 対象:豆類
  • 分類:普及

背景・ねらい

国産大豆は水田転作作物として重要な位置を占め、多収かつ高付加価値の大豆新品種の育成が求められている。その一方で、従来の大豆食品の需要の増加には限界があることから、新規用途に適した大豆の品種育成を図る必要がある。そのため食品素材としての用途拡大を制限している大豆の青臭みに関与するリポキシゲナーゼを完全に欠失させた暖地向けの大豆を育成した。

成果の内容・特徴

  • 「エルスター」は「九交355」に「フクユタカ」を2回、「むらゆたか」を1回交配して得られた、リポキシゲナーゼ完全欠失系統である。
  • 成熟期は「フクユタカ」、「むらゆたか」と同じで“晩の早”の“秋大豆型”で九州地域での栽培に適する。
  • 子実重及び子実粗蛋白質含有率は「フクユタカ」と同等である。
  • 豆乳飲料並びに豆乳を利用した新規大豆加工食品素材として優れる。

成果の活用面・留意点

  • 小麦粉、卵、食用油などと組合せが可能で、バラエティーに富む新規大豆加工食品が製造できる(食品研究成果情報 第6号p10-11、大豆加工食品の製造法(特許第2500350号))。
  • ダイズ立枯性病害(黒根腐病)の発病地域での栽培は避ける。また排水不良田では本病の発病が助長されるため充分な排水対策を行うこと。
  • 普通大豆が混入すると加工時にリポキシゲナーゼ完全欠失性の優位性が損なわれるため、播種・収穫・乾燥時には特に注意するとともに、定期的な種子の更新を行うこと。

具体的データ

表1 エルスターの特性概要

その他

  • 研究課題名:だいずの暖地向き良質多収品種の育成、機能性、栄養性に優れた新形質暖地向け大豆の育成
  • 予算区分:経常、作物対応研究(転作作物)、総合研究(地域総合)
  • 研究期間:平成11年度(平成2~11年)