細裂試料を用いたさとうきびの簡易な品質評価法

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要約

さとうきび品種選抜試験におけるブリックス、蔗汁糖度及び繊維分を同時に分析するために細裂試料を用いた近赤外分光分析計による品質評価法を開発した。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:09972-5-0100
  • 部会名:総合農業(作物生産)、畑作
  • 専門:育種
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

さとうきび育種における品質評価の従来の方法は、シュレッダーによる茎の細裂の後に油圧プレスによる搾汁と搾汁残さの乾物測定を行うため、蔗汁の分析と繊維分の測定に多くの労力を必要とした。そこで、さとうきび茎の細裂試料を用いた近赤外分光分析計(NIR)による品質評価法を開発して複数項目が同時に分析可能な簡易な測定法を確立し、品種選抜・選定試験の効率化を図る。

成果の内容・特徴

  • さとうきびの茎を搾汁せず,細裂のみで蔗汁糖度が分析できる。乾物を測定せずに茎の繊維分が測定できる。
  • 回転式の試料カップ(Rotating cup)に細裂試料約30gを充填し、回転させながらNIRで測定することにより、高精度(sep=ブリックス:0.298、蔗汁糖度:0.320、繊維分:0.382)な測定ができる(図1・図2)。
  • 検量線はブリックスと蔗汁糖度についてはシュークロースに関する波長(1438nm)を含み、繊維分についてはセルロースに関する波長(2352nm)を含んでいる(表1)。
  • 未知試料について、ブリックスおよび蔗汁糖度の実測値から算出した可製糖率とこの方法で得られた測定値から算出した可製糖率との間には高い正の相関が認められる(r=0.938**)(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 従来の細裂、搾汁、糖度測定、搾汁残さの乾物測定の4工程のうち搾汁と搾汁残さ乾物測定の2工程が不要となるため、さとうきびの品種選抜・選定試験の品質評価が効率化される。
  • 原スペクトルによる検量線であるためフィルタ型式のNIRへ検量線が応用できる。
  • この品質評価法は補正により他地域で実施する選抜試験にも適用できる。
  • 初期選抜試験や種属間交雑系統に適用するにはなお検討が必要である。
  • 毎年数点を分析し、年度間差を修正する必要がある。

具体的データ

図1 未知試料における蔗汁糖度の実測値と推定値の相関関係

 

図2 未知試料における繊維分の実測値と推定値の相関関係

 

図3 未知試料についての推定値と実測値から算出した可製糖率の相関関係

 

表1 重回帰分析による検量線の結果と検量線精度

その他

  • 研究課題名:さとうきび良質安定多収機械化適応品種の育成
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(昭和42~平成12年)