塊根貯蔵中の低温耐性が異なるカンショ2品種はミトコンドリアの低温反応性が異なる

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要約

塊根貯蔵中の低温耐性が異なるカンショ品種「高系14号」と「九州112号」は、呼吸温度反応が異なり、さらにこの違いはミトコンドリアの脂質の差異が影響している可能性がある。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・遺伝資源利用研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:総合農業(作物生産)、畑作
  • 専門:生理
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンショは塊根貯蔵中の低温障害により品質が劣化しやすく、これが流通・加工における大きな制限要因となっており、貯蔵中における低温耐性品種の育成が重要である。しかし、低温反応の品種間差異の機構については不明の点が多い。そこで、塊根貯蔵中の低温に対する反応が明らかに異なる品種・系統の低温耐性に関連する生理・生化学的差異を明らかにし、低温耐性品種育成の基礎資料を得ることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 高系14号では、貯蔵中に2週間程度の低温(摂氏5度)に遭遇すると、肉色が黒変し、外観品質が低下するのに対し、九州112号はではかえって肉色の黄色が増し、品質低下は認められない。この傾向は、本

    研究期間3年間を通じても常に認められた再現性の高い現象であり、九州112号は高系14号に比べて貯蔵中の低温耐性が高い(データ略)。

  • この両品種の温度反応に関わる種々の生理的特性の中で、塊根組織の呼吸速度の温度反応をアレニウス作図した際に観察される不連続点の温度が、高系14号では摂氏13度付近であるのに対し、九州112号では摂氏10度付近と低い(図1、図2)。
  • 両品種の塊根のミトコンドリアの脂肪酸組成を比較したところ、九州112号でステアリン酸の比率が低く、リノレイン酸の比率が高い傾向が見られる(表1)。
  • これらから、この両品種の塊根貯蔵中の低温耐性の差異には、呼吸の温度反応の差異が関与し、さらに呼吸の温度反応にはミトコンドリアの脂肪酸組成が関係している可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • カンショにおける低温耐性品種育成の戦略を策定する上で、また、選抜段階における指標の一つとして有用である。
  • 九州112号は貯蔵中の低温耐性は高いものの、貯蔵中の水分損失が速く、総合的な貯蔵性は必ずしも高くはない。

具体的データ

図1 高経14号塊根組織切片の呼吸速度の温度反応のアレニウス作図 図2 九州112号塊根組織切片の呼吸速度の温度反応のアレニウス作図

 

表1.塊根から調製した粗分画ミトコンドリアの脂肪酸組成

 

その他

  • 研究課題名:かんしょの貯蔵性の解明と低温耐性育種素材の作出
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)