暖地向きサイレージ用とうもろこしの高消化性・耐倒伏性品種「九交B93号」

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要約

「九交B93号」は暖地向き春播き栽培用とうもろこしの高消化性・早生品種で、ホールクロップのTDN含量が既存品種より3~4%高く、抜群の耐倒伏性を示す。ごま葉枯病およびさび病抵抗性は極強である。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・飼料作物育種研究室
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:草地(育種)、畜産・草地
  • 専門:育種
  • 対象:飼料作物類
  • 分類:普及

背景・ねらい

わが国の飼料用とうもろこしの栽培では導入品種が主に利用されているが、自給粗飼料の安定生産を図るためには国産優良品種の育成が不可欠である。そこで、九州農試では、中生の晩に属する安定・多収品種「はたゆたか」、中生の高消化性・多収品種「ゆめそだち」等を育成したが、さらに熟期別優良品種の育成が求められている。そこで、「ゆめそだち」より早生で耐倒伏性および主要病害抵抗性に優れる高消化性F1品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「九交B93号」は、「Mi29」を種子親とし、「Mi47」を花粉親として育成されたデント種×フリント種の単交雑一代雑種である。
  • 熟期は早生に属する。絹糸抽出期は「DK623」より1日早く、「セシリア」より2日早い。アップライト型で、稈長は「DK623」および「セシリア」より低く、着雌穂高は「DK623」より高く「セシリア」より低い(表1)。
  • 耐倒伏性は極強で、「DK623」および「セシリア」よりも強く、折損も少ない(表2)。
  • 高消化性で、茎葉TDN含量は「DK623」より5%、「セシリア」より7%高い。雌穂TDN含量は「セシリア」並で「DK623」より3%高い。ホールクロップのTDN含量は「DK623」より4%高く、「セシリア」より3%高い(表3)。これらの特性は乳熟期から完熟初期のいずれのステージでも安定している(図1)。
  • 乾総収量は「DK623」並で「セシリア」よりやや低いが、推定TDN収量は 「DK623」より6%高く「セシリア」より2%高い。乾雌穂重割合は「DK623」並で「セシリア」よりやや低い(表1)。
  • 密植適応性はDK623およびセシリアより高い(表4)。
  • ごま葉枯病抵抗性は極強で、「DK623」並に強く、「セシリア」より強い。紋枯病には「DK623」および「セシリア」並に強い。さび病には極強で「DK623」および「セシリア」より顕著に強い(表1)。
  • 採種量は、雌穂畦比3:1で40kg/a程度が見込まれる。種子親の絹糸抽出期と花粉親の雄穂開花期はほぼ合致し、採種栽培では両親を同時播種することができる。

成果の活用面・留意点

  • 九州、四国および中国地域の春播き栽培に適し,普及見込み面積は3,000haである。
  • 栽植密度は700~780本/a 程度とし、5月下旬までに播種する。二期作栽培の前作に用いる場合には4月上旬までに播種することが望ましい。

具体的データ

表1 九州・四国・中国地域における「九交B93号」の主要特性

 

表2 九州・四国・中国地域における倒伏および折損個体率

 

表3 TDN含量の推定値  (育成地、1997~1999)

 

表4 栽植密度反応 (育成地、1997~1999)

 

図1 刈取りステージとホールクロップの推定TDN含量との関係 (育成地、1999年、784本/a)

その他

  • 研究課題名:暖地向き飼料用トウモロコシの新品種育成
  • 予算区分:経常、転作作物
  • 研究期間:平11年度(平6~11年)