イタリアンライグラス草地での冬期親子放牧と黒毛和種子牛の発育

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要約

冬期(12月~1月)にイタリアンライグラス草地で現地分娩し、クリープ飼料無給与で親子放牧を行った黒毛和種子牛は舎飼いでクリープ飼料を自由採食した子牛と同様の平均日増体量約1.0kgの良好な発育を示した。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・育種繁殖研究室、草地部・草地管理研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:畜産・草地
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年、放牧子牛は濃厚飼料を多給して飼育された舎飼いの子牛と比較して、相対的に発育が遅延するため、市場おいて低く評価される傾向にある。そのため、従来の放牧慣行地域において、哺乳子牛の放牧はほとんど実施されなくなっており、子牛の高増体が可能な親子放牧法の開発が要望されている。そこで、暖地において冬期に高い栄養価を示すイタリアンライグラス草地での親子放牧が子牛の発育に及ぼす影響をクリープ飼料自由採食の舎飼子牛を対照に検討した。

成果の内容・特徴

2haのイタリアンライグラス草地(平坦地)を用い、12月から翌年5月まで放牧地で分娩した黒毛和種母子5組を離乳時(4カ月齢)までクリープ飼料無給与で輪換放牧した。

  • 放牧地で現地分娩した子牛の娩出から起立および哺乳までの時間は舎飼分娩した子牛と差異がなく、また、放牧子牛の皮膚温は気温の低下に伴ない低下し、舎飼子牛より低い傾向にあるが、体温は舎飼区と差異は認められず、ほぼ一定値で推移する。(表1)
  • イタリアンライグラスの粗蛋白質含量は11.1~23.6%の間で推移し、特に12月、3月、4月は20%以上の高い値を示す。放牧子牛の日増体量は粗蛋白質含量の最も低い2月を除き、各月とも0.9kg以上の良好な値を示し、放牧子牛は離乳時体重149.9kg、生時~離乳時までの日増体量0.99kgとクリープ飼料を自由採食した舎飼子牛と同様の良好な発育を示す。(図1,表2,写真1)
  • 放牧子牛の血液性状は総蛋白質濃度(TP)、遊離脂肪酸(NEFA)、GOTについては舎飼子牛と差異は見られず、尿素態窒素(BUN)、グルコース、コレステロールは舎飼子牛より高く、栄養状態が良好である。(表2)

成果の活用面・留意点

九州.沖縄地域における水田裏作、転作田および遊休農地を利用した省力的肉用子牛生産に適用できる。

具体的データ

表1 子牛の分娩生態と体温・皮膚温の変化

 

表2 子牛の日増体量と血液性状

 

図1 イタリアンライグラスの粗蛋白質含量と子牛の日贈体量

 

写真1 放牧条件下で良好な発育を示した黒毛和種子牛

その他

  • 研究課題名:暖地における肉用牛の周年放牧が繁殖性及び子牛発育に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9-15年)