ゴマ粕を用いた豚の脂肪蓄積抑制技術

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

肥育豚に大豆粕を代替してゴマ粕を12%含む飼料を11週間給与すると、肥育期間中の平均増体量、飼料摂取量、飼料要求率に影響を与えることなく、出荷時の背脂肪厚を2.8mm低下させることができる。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・肉畜生産研究室
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:畜産、畜産・草地
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

厚脂は豚の枝肉評価において上物からの格落ち原因の上位を占めている。また、近年の健康食ブームから、脂肪の少ない豚肉への消費者ニーズも大きくなっている。一方、豚からの窒素排泄量を低減することを目的として、飼料中の蛋白質含量を下げ、不足する必須アミノ酸を添加した飼料を給与する技術が開発されつつあるが、この時に脂肪が過剰に蓄積する場合のあることが報告されている。そこで、飼料中の蛋白質源として大豆粕に代替してゴマ粕を配合し、ゴマ絞り粕の有する新規な脂肪蓄積抑制効果について検討した。

成果の内容・特徴

  • トウモロコシと大豆粕を主体とした飼料(対照区)とその大豆粕を代替してゴマ粕を12%配合した飼料(ゴマ粕区)を、体重35kgの肥育豚に11週間給与すると、出荷時の背脂肪厚はゴマ粕を給与した豚で2.8mm程度低下する(図1)。
  • 肥育期間中(11週間)の平均増体量、飼料摂取量、飼料要求率は、対照区とゴマ粕区で差はなく(表1)、脂肪の蓄積抑制効果の認められるゴマ粕を配合した飼料を給与した豚で、通常の飼料を給与した豚と同等の発育成績が期待できる。
  • ゴマ粕区の豚では対照区に比較して、脂肪組織での脂肪酸合成系酵素活性が低下し、肝臓における脂肪酸分解系酵素活性が上昇しており(図2)、このことが背脂肪厚増加の抑制に寄与していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 厚脂が枝肉の格落ち原因となっている養豚場で適用することが有効な技術である。
  • 背脂肪厚増加の抑制効果はゴマ粕を配合した飼料の給与開始後10週目以降に顕著に現れるが、この効果を期待するために10週間以上に渡りゴマ粕を給与する必要があるのか、あるいは肥育後期(脂肪が蓄積しやすい時期)にのみ効果が現れるのかは検討が必要である。
  • ゴマ粕の単価は135円/kg程度で、大豆粕にゴマ粕を代替して12%配合した場合に飼料単価は約2割高くなる。

具体的データ

表1 発育およびと体成績

 

図1 肥育開始後の背脂肪厚増加の推移

図2 肝臓における脂肪酸分解系酵素および脂肪組織における脂肪酸合成系酵素の活性

その他

  • 研究課題名:肥育豚からの窒素排泄量低減のための給与飼料の開発
  • 予算区分:環境研究(家畜排泄物)
  • 研究期間:平成11年度(平成6~11年)