ビタミンA制御肥育と牛肉中脂肪含量および脂肪酸組成との関係
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要約
肥育中期(16~19ヵ月齢)のビタミンA制御は、胸最長筋の粗脂肪含量を高め、ロース芯の脂肪交雑の向上をもたらすものの、脂肪の質(不飽和脂肪酸割合)に対する影響は認められない。肥育の延長が、粗脂肪含量と不飽和脂肪酸割合の両方の上昇をもたらすことと対照的である。
- 担当:九州農業試験場・畜産部・栄養・飼料研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:畜産、畜産・草地
- 専門:飼育管理
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
肥育中期(16~19ヵ月齢)のビタミンA制御肥育が、ロース芯の脂肪交雑、すなわち筋肉中粗脂肪含量の向上をもたらすことが明らかになってきた。ところがその脂肪そのものの品質、すなわち牛肉の風味と相関のある不飽和脂肪酸割合については明らかにされていない。そこで、ビタミンA制御肥育の脂肪酸組成に対する影響を検討し、長期飼養による肉質向上を目指した牛肉との比較を行った。
成果の内容・特徴
- 黒毛和種去勢牛(10ヵ月齢)を用いた16カ月間の肥育において、ビタミンAの投与時期を全期間、18ヵ月齢および22ヵ月齢以降の3水準とし、2カ月間隔で 100万IUの筋肉注射を行った結果、投与開始時期の遅い区(制御期間の長い区)ほど、胸最長筋の粗脂肪含量が有意に高かった。(図1上段)
- 一般的には脂肪交雑と不飽和脂肪酸割合との間に正の相関が認められているが、胸最長筋トリアシルグリセロール画分の不飽和脂肪酸割合には、処理区間差が認めらなかった。(図1下段)
- 黒毛和種去勢子牛を用い肥育期間を17カ月および22.4カ月にした肥育試験を実施した。飼養期間の延長により、胸最長筋の粗脂肪含量が有意に高い値となった。(図1上段)
- トリアシルグリセロール画分の不飽和脂肪酸割合は、17カ月肥育に供した8頭の内1頭が極端に高い値を示したため有意とはならなかったが、肥育期間の延長により高くなる傾向を示した。(図1下段)
成果の活用面・留意点
- 霜降りにとどまらない牛肉の品質評価の検討に活用できる。
- 牛の体組織における不飽和脂肪酸割合は部位によって異なり、胸最長筋トリアシルグリセロール画分の不飽和脂肪酸割合の数値と比較して、皮下脂肪は6~8高く、腎臓脂肪は6~8低い値となる。したがって、データ比較の際には注意が必要である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:肉用家畜の体内脂肪蓄積および肉質に対する脂溶性成分給与の影響の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成7~11年度)