貝磨砕液により誘発されるスクミリンゴガイ孵化貝の水上逃避行動
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要約
スクミリンゴガイの孵化貝は、同種個体の磨砕液を感知すると、水中から水上に這い上がる。これは、捕食者に対する回避行動と考えられる。
- 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫生態制御研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:病害虫
- 専門:作物虫害
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
魚類、軟体動物などでは、天敵に捕食される際に出現する同種個体由来の物質を感知して、その場から逃避する行動が知られている。このような行動を利用することによって貝の行動制御ができる可能性があるので、スクミリンゴガイにもあるかどうか室内実験により確かめた。
成果の内容・特徴
- スクミリンゴガイ(孵化貝)の磨砕液(0.5ml)を試験管(孵化貝10頭、水50ml入り)に滴下すると、孵化貝は水上に出て、試験管の壁を這い登るという特異な行動を示す。このような行動は別種の貝でも知られており、これは捕食者からの回避行動と考えられる。他種の貝の磨砕液では孵化貝はほとんど反応しない(図1)。
- 水上に這い上がる孵化貝の割合(水上貝率)は、磨砕液の濃度(貝の生重に対し磨砕のため加える水の量)が1千-1万倍で高く、100万倍で低下し、1億倍では殆ど0となる(図2)。
- 孵化後1ヶ月以上経過した幼貝の反応は、急激に低下する(図3)。
- 孵化貝を16時間以上絶食させると磨砕液に対する反応は非常に低くなる(図4)。
- 磨砕液は作成後時間経過にともない効果が低下し、磨砕1時間後に滴下すると反応孵化貝率が半減する。磨砕液にEDTA(蛋白分解酵素阻害剤)を加えると効果が持続され、作成後1時間放置しても反応は低下しない(図5)。
成果の活用面・留意点
- 磨砕液由来の物質によってこの貝の行動を制御できる可能性がある。
- 孵化後30日以上の貝および成貝では、磨砕液による水上への逃避行動は解発されない。
具体的データ





その他
- 研究課題名:スクミリンゴガイの在来天敵の有効性の解明
- 予算区分:行政特研(スクミリンゴガイ)
- 研究期間:平成11年度(平成9年~12年)