カメムシタマゴトビコバチの2種カメムシ卵に対する産卵行動の差
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要約
卵寄生蜂 カメムシタマゴトビコバチが寄主卵の認知・受容に要する時間は、ホソヘリカメムシよりもイチモンジカメムシで長く、卵表面の化学物質の差が2種カメムシ卵での産卵率と産卵行動の差をもたらしている。
- 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫生態制御研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
- 専門:作物虫害
- 対象:豆類
- 分類:研究
背景・ねらい
卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチOoencyrtus nezaraeは、寄主範囲が広く、ダイズカメムシ類の有力な天敵である。本寄生蜂は寄主種によって寄生率が異なり、寄主種に対する選好性を有する。本寄生蜂の各種カメムシ卵に対する産卵率を向上させるため、産卵行動の寄主種による差を解析し、寄主種の認知・受容に関わる要因について検討した。
成果の内容・特徴
- カメムシタマゴトビコバチは、ホソヘリカメムシ卵に接触したほぼすべての雌蜂が産卵するが、イチモンジカメムシ卵に接触した雌蜂では約半数しか産卵しない(表1)。
- ホソヘリカメムシ卵では、すべての雌蜂が1回目の接触でドラミング行動を開始するが、イチモンジカメムシ卵では、数回接触した後にドラミング行動を開始するものが多い(表1)。その結果、ドラミング行動を開始するまでの時間が、ホソヘリカメムシよりもイチモンジカメムシで有意に長い(表1)。
- ドラミング行動を開始した雌蜂の数は、2種カメムシ卵の表面を洗浄した蒸留水を塗布したガラスビーズで何も塗布しなかったガラスビーズより多く(図1)、イチモンジカメムシよりもホソヘリカメムシで多い(原液および10倍希釈液)。また、洗浄液の希釈率の増加に伴う雌蜂の反応率の低下傾向が,ホソヘリカメムシとイチモンジカメムシで異なる。
- 以上の結果から、カメムシタマゴトビコバチの産卵行動の解発の一因として、寄主卵表面の化学物質が関与しており、その物質の質的あるいは量的な差が本寄生蜂の寄主種による産卵率および産卵行動の差をもたらすと考えられる。
成果の活用面・留意点
- カメムシタマゴトビコバチと寄主カメムシとの寄主・寄生者関係における化学的要因の関与が明らかとなり,様々なカメムシ卵に対する本寄生蜂の産卵率の向上が期待される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ダイズカメムシと卵寄生蜂の相互作用
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成8~11年)