蓋の成長線を用いたスクミリンゴガイの成長量測定
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要約
水田内に生息するスクミリンゴガイの越冬後の殻高成長量は、蓋に残された成長の境界を示す成長線を用いて推定できる。越年貝の成長速度は成貝サイズに達するまではほぼ一定であるが、以後はサイズに依存して低下する。
- 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:総合農業(生産環境)、病害虫
- 専門: 作物虫害
- 対象: 水稲
- 分類: 研究
背景・ねらい
スクミリンゴガイは水稲直播栽培の普及を妨げている重要な有害生物であり、その管理技術開発のために、自然条件下における貝の成長と繁殖に影響する要因の解析が求められている。これまで簡便な方法がなかった越年貝の水田内における成長量を測定するために、蓋に残された成長線を利用する方法を試みる。
成果の内容・特徴
- 入水直後の越年貝の蓋長と殻高の間には高い相関があり、蓋長によって殻高を高精度で推定できる(図1)。
- 貝が成長を再開したあとの蓋の成長部分は淡色で薄く、暗褐色で厚い越冬時の蓋部分から容易に区別できるので、蓋に残された成長線を用いて越冬時の蓋長を測定することによって越冬時の殻高を推定できる(図2、図3)。
- 越年貝の播種20日後の殻高成長率は、越冬時の殻高が15 mm 未満の貝ではサイズによらず平均して92.6%であるが、15 mm 以上の貝ではサイズに依存して低下する。すなわち、成貝サイズ(殻高約28 mm )に達するまでは貝の成長率はサイズよらずほぼ一定であるが、繁殖開始後は貝の成長は鈍化する(図4)。
- 成長をほぼ停止する9月以前に、越年貝は成貝となりその殻高は越冬時のサイズに依存しなくなる。しかし、越冬時の殻高が 6 mm 以下の貝の一部は性的に未成熟なまま越冬に入る(データ省略)。
成果の活用面・留意点
- 成長線の有無によって当年貝と越年貝の区別が可能であり、任意の調査時点における越年貝と当年貝の構成を調べることができる。また、越冬時の貝のサイズ分布を調べておけば、越冬時のサイズ別に貝の生存率を比較することが可能であり、水田内における個体群動態の解析に成果を活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:水田における個体群動態の解明
- 予算区分:行政特研(スクミリンゴガイ)
- 研究期間:平成11年度(平成9年~11年)