鉄欠乏アルファルファ根に誘導されるストレス関連遺伝子
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要約
アルファルファを鉄欠如処理すると、処理開始後数時間(~8時間)で根において抗酸化酵素(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)をコードする遺伝子の発現が認められる。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・上席,土壌資源利用研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:生産環境
- 専門:肥料
- 対象:牧草類
- 分類:研究
背景・ねらい
アルカリ土壌でも生育の優れるアルファルファは、根の鉄(III)還元能を高めたり、根圏のpHを下げたり、鉄溶解性物質を根から放出したりして難溶性の鉄を獲得している。本研究では、鉄欠乏特異的に起きる生化学的変化をタンパク質生合成の面から解析し、さらにアルファルファの鉄欠乏ストレス耐性に関わる遺伝子の単離を目的に鉄欠乏根のcDNAライブラリーを作成し、鉄欠乏特異的な遺伝子のスクリーニングを行う。
成果の内容・特徴
- 鉄欠如処理2日後のアルファルファ根のmRNAをin vitro翻訳させ、無処理区と比較するとpI5.3 分子量 42kDa(図中Xと表示)のペプチドの発現が抑制される。この時点ではアルファルファは可視的な鉄欠乏の症状を呈さない(図1)。
- 鉄欠乏アルファルファ根のcDNAライブラリーから鉄欠乏特異的なクローンを選抜した。ノーザン分析の結果、このクローンは処理後8時間で発現が誘導され、2日目に一時発現が抑制されるがその後再び発現が強く誘導される(図2)。
- このクローンは完全長のmRNAをもち、全長815bp,アミノ酸214残基のタンパク質をコードする。
- このクローンの翻訳アミノ酸配列をデータベース検索したところ、脂質過酸化物の代謝に関連する抗酸化酵素の一種であるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子と高い相同性が認められた(表1)。
成果の活用面・留意点
- 新規に転写レベルの変化が鉄欠如処理数時間で起きることを明らかにしたもので、今後栄養ストレス下における遺伝子発現の機作解明を行う上で留意する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:根圏ミネラルを有効化する機能性物質の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平6-10(11)年度)