水稲直播技術の試行が技術評価に及ぼす影響
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要約
技術導入に積極的な農業経営主は、消極的な経営主に比較しより先見性のある技術評価を行う。しかし同時に試行した場合、試行後消極的な経営主の評価は積極的な経営主の評価に近づいている。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:農業経営
- 専門:経営
- 分類:研究
背景・ねらい
新たな開発技術の迅速な現場への導入・普及が求められている。新技術の普及には経営主による試験的導入(以下、試行と表記)が有効であるといわれるが、技術の試行がどのようなメカニズムで効果を発揮するのかは明確ではなかった。そこで、水稲直播(代かき同時土中点播直播)技術を自主的に同時に試行した13経営主について、試行前後の技術評価の変化をもとに、試行の有する意義を明らかにする。
成果の内容・特徴
経営主が技術導入に積極的か否か(以下、革新性が高いか低いと表記)に基づく評価の差異と、試行前後の評価の変化を明らかにした。その際、革新性は経営主の自己評価に基づいている。
- 経営主の革新性の高低は、水稲直播技術の諸特徴に関する経営主の認識率と、試行前において明らかな相関が見られる(図1信頼区間95%で有意)。なお、経営面積の大小、経営主の年齢、就業状況(専兼別)と認識率には相関が見られない。
- 試行前後で、革新性が高い経営主の重視度(どのようなカテゴリーの技術の特徴を重視するか)は、革新性が低い経営と比較して変化が少ない(図2)。
- 圃場管理に関連するカテゴリーは、試行後全体に重視度が上昇するが、特に革新性が低い経営主の重視度は大幅に上昇し、革新性が高い経営主に近づく(図2右側)。
すなわち、革新性が高い経営主は革新性が低い経営主に比較し、導入以前から技術をよく認識しているうえに、より試行前後で一貫した技術評価を行う。しかし、試行によって革新性が低い経営主の技術評価は革新性が高い経営主に近づき、革新性が高い経営主と類似した技術評価が可能になる。
成果の活用面・留意点
新技術の迅速な普及・定着方法の研究に貢献する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:技術評価における経営間差異の要因解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成9~13年度)