遺伝子組換えによるモチ性カンショの作出

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要約

カンショ(高系14号)から単離したデンプン粒結合型スターチシンターゼIの全長cDNAをセンス方向で高系14号に導入することにより、モチ性のカンショを作出した。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・育種工学研究室・流通利用研究室、石川県農業短期大学
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:生物資源・生物工学、植物バイテク
  • 専門:バイテク
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年、デンプン代謝に関与する酵素の生化学的な研究は急速に進んでおり、その知見を生かして、遺伝子組換えにより、既存の遺伝変異の範囲を超えるデンプンの変異を得ることが可能となりつつある。本研究では、その一つの試みとして、アミロースの合成をつかさどるデンプン粒結合型スターチシンターゼI(GBSSI)の全長cDNAをセンス導入し、モチ性カンショの作出を行う。

成果の内容・特徴

  • アグロバクテリウム法によって得られた26個体の組換え体の塊根を、ヨウ素ヨードカリ染色によりスクリーニングした結果、1個体においてモチ性を示す茶褐色の染色パターンがみられた(図1左)。
  • ヨウ素吸光度法で調べた結果、塊根より調製したデンプンのアミロース含量は0%である(図2レーン1)。
  • 塊根におけるGBSSIタンパクの発現がみられない(図3レーン1)。
  • 以上の結果から本組換え体はモチ性であると判断される。

成果の活用面・留意点

  • 本組換え体は、アミロペクチンのみで構成されるデンプンを含有する、新規のカンショ材料である。

具体的データ

図1 ヨウ素ヨードカリ染色を行った塊根の断面 左、中央:GBSSIのcDNAを導入した組替え体 右:非組替え体

 

図2 デンプンのアミロース含量 1:図1の左の組替え体 2:図1の中央の組替え体 3:非組替え体

 

図3 デンプン粒結合タンパクの電気泳動図 M:サイズマーカー(上より94、67、43、30kDa) レーンの数字は図2に対応し、それぞれ図2で の測定に用いたデンプンサンプルよりタンパクを抽出した。GBSSIタンパクのバンドを矢印で示す。

その他

  • 研究課題名:病理学的・生理生化学的有用遺伝子のクローニング
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成8~12年)