青果用カンショを主軸作物とする作付体系における窒素収支と減肥栽培

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要約

カンショーダイコン、カンショーイタリアンの体系では窒素負荷はみられないが、カンショーキャベツ、カンショーバレイショ、カンショーゴボウ体系では7~15kg/10aの窒素負荷が認められる。カンショーキャベツ体系において、収穫残さをすき込めば、カンショは無施肥、キャベツは残さの窒素分を減肥しても、慣行施肥と同等の収量が得られる。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・生産管理研究室
           (九州沖縄農業研究センター畑作研究部生産管理研究室)
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:畑作
  • 専門:栽培
  • 対象:いも類・葉茎菜類・根菜類・葉根菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年、南九州の畑作地帯において、飼料作物栽培における家畜ふん尿の多量施用や施肥量の多い茶、露地野菜の導入により硝酸態窒素の溶脱が進み、浅層地下水の汚染が懸念されている。このような状況を打開するためには、作付体系全体の窒素負荷を明らかにするとともに、体系として窒素負荷を低減し窒素溶脱の防止を図る必要がある。ここでは、青果用カンショを主軸作物とする作付体系について、窒素施肥量から窒素持出量を差し引いた値を窒素負荷量とし各作付体系における窒素負荷の程度をみるとともに、カンショーキャベツ体系において収穫残さを利用した減肥栽培で体系として窒素負荷が低減できることを明らかにしようとした。

成果の内容・特徴

  • カンショーダイコン体系とカンショーイタリアン体系ではほとんど窒素負荷はみられないが、カンショーキャベツ体系、カンショーバレイショ体系及びカンショーゴボウ体系で7~15kg/10aの窒素負荷が認められる(図1)。
  • いずれの作付体系でも収穫残さをすき込めば窒素負荷は著しく増加し、窒素負荷の小さい体系でも15~20kg/10aの窒素負荷がかかり、特にカンショーキャベツ体系では30kg/10aに達する(図1)。
  • カンショ跡のキャベツでは、カンショの残さをすき込めば、それに含まれる窒素分を減肥しても、慣行施肥と同等の収量が得られる(図2)。
  • キャベツ跡のカンショでは、キャベツ残さに含まれる窒素量がカンショの基肥窒素量を上回るため、無施肥で慣行施肥と同等の収量が得られる(図3)。
  • 収穫残さの利用により、カンショーキャベツ体系全体の窒素施肥量は32.8kg/10aから24.5kg/10aに低下し、減肥率25%の減肥栽培が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 原料用や加工用のカンショでは基肥窒素量が異なるので、キャベツの残さに含まれる窒素の不足分を基肥として補う必要がある。
  • カンショーキャベツ体系を連続すると土壌線虫が増加するので、線虫害防止のための対策を施す必要がある。
  • 収穫残さにはリン酸、カリ等の養分要素が含まれているが、カンショーキャベツ体系を連続する場合には土壌診断に基づき不足分を基肥として補う必要がある。

具体的データ

図1 各種作付体系における窒素収支

 

図2 カンショ跡キャベツにおける減肥の効果図3 キャベツ跡カンショにおける減肥の効果

その他

  • 研究課題名:甘しょ、露地野菜及び飼料作物の輪作による窒素溶脱低減技術の開発
  • 予算区分:地域総合[環境保全]
  • 研究期間:平成12年度(平成8~12年度)