高エネルギー飼料給与による夏季分娩泌乳牛の繁殖改善効果

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要約

夏季に分娩した乳牛に高エネルギー,高CPu(ルーメン非分解性タンパク質)の混合飼料を給与することにより飼料効率が高まり,繁殖機能の回復を早める効果が期待できる。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・環境生理研究室(九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部環境生理研究室)
  • 連絡先:096-242-7748
  • 部会名:畜産、畜産・草地
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

夏季に分娩する乳牛では,その他の季節に比べ分娩時のストレスが大きく,また,分娩後の急激な乳量の増加ならびに暑熱による食欲の低下などにより,養分摂取量が大きく不足する傾向にある。その結果,乳量,乳質が低下するだけでなく,繁殖機能も低下すると考えられる。そこで,夏季に分娩する牛に,飼料中のTDN含量およびCP中のCPu(ルーメン非分解性タンパク質)含量が3水準からなる混合飼料を給与し,これらの飼料が乳牛の繁殖性および乳生産性に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 7~9月分娩のホルスタイン種乳牛16頭に,表1に示す成分の混合飼料を給与すると,分娩後5~60日間のTDN摂取量は,77%区が最も多く,FCM生産量でも77%区が多くなる。また,飼料効率(FCM/TDN摂取量および乳蛋白/CP摂取量)は,70%区に比べ74および77%区で高くなる傾向を示す(表2)。
  • 繁殖成績では,全区とも夏季は初回排卵,発情が遅れる傾向にあるが,TDN含量が多いほど繁殖成績が良くなる(表3)。
  • 血液代謝プロファイル像では,全区とも泌乳初期のNEFAが高く,分娩後の急激な乳生産の増加に対してエネルギー摂取量が不足し,体脂肪が顕著に動員されていることが推察される。さらに,GOT等の肝機能の数値も高く,脂肪肝の兆候がみられる。しかし,いずれの数値も77%区が最も標準値に近くなる。さらに,BUNは,CPuの割合が高いほど低くなる傾向を示し,TDN含量に合わせてCPuの割合を高めたことにより蛋白質の利用効率が高まると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 夏季に混合飼料の組成を設計する際の指針として活用できる。
  • 飼料中のTDN含量を多くする際には,CP中のCPuの割合を高める必要がある。

具体的データ

表1 試験頭数と飼料成分

 

表2 分娩後5~60日間の飼料効率 表3 分娩後の繁殖機能回復

 

図1 血液代謝プロファイル像

その他

  • 研究課題名:夏季分娩牛の養分代謝特性の解明に基づく繁殖性及び乳生産性向上技術の確立
  • 予算区分:総合的開発「繁殖技術」
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)