反芻動物のCLAはトランスバクセン酸からの不飽和化が主要蓄積経路である

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要約

反芻動物への共役リノール酸(CLA)供給は、飼料中の高度不飽和脂肪酸がルーメン微生物によりトランスバクセン酸(t11-C18:1)に変化し、消化吸収され脂肪組織に移行し、そこでの不飽和化による生合成が主要経路である。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・栄養・飼料研究室
           (九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部栄養生理研究室)
  • 連絡先:096-242-7747
  • 部会名:畜産,畜産・草地
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

反芻家畜に特徴的な脂肪酸で、ガン予防効果を有するCLAの体組織中含有量を効率的に高めるためには、その蓄積機構を明らかにする必要がある。そこで、栄養水準を異にして90日間飼養した去勢山羊10頭から蓄積部位を異にする体組織を採取し、そのCLA割合を調査し、体組織における不飽和化との関連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 高栄養で飼養された山羊の脂肪組織は高い不飽和脂肪酸割合を示すとともに、CLA割合も高い。(表1)
  • 各山羊の皮下脂肪、腎臓脂肪、中足骨・下腿骨・大腿骨の黄色骨髄の不飽和脂肪酸とCLA割合はいずれも、体表面に位置し不飽和化活性の高い組織で高い値を示す。
  • 第1胃と第4胃の内容物中のCLA割合は0.1%程度と低い値であるのに対し、トランスバクセン酸(t11-C18:1)割合は2~3%と高い値を示す。このことから、体脂肪へのCLA供給がCLAそのものの消化吸収に依存する割合は小さいものと考えられる。
  • 体組織におけるCLA/t11-C18:1比は不飽和化の指標となるC17:1/C17:0との間に極めて高い正の相関が認められる。すなわち、不飽和化活性の高い山羊では(図1)、また不飽和化活性の高い体組織において(図2)、トランス酸からCLAへの変換割合が高い。肉用牛においても同様の相関が認められる。

成果の活用面・留意点

  • 反芻動物に特徴的なCLAがトランス酸からの不飽和化によって生合成されることが明らかとなり、単胃動物であっても、中間産物であるトランス酸を含む硬化油の給与によってCLA蓄積につながる可能性が示唆された。
  • 繊維質飼料の多給はCLAの前駆物質であるトランス酸の蓄積を促すものの、CLA割合を高めるためには体脂肪における不飽和化も重要であり、不飽和脂肪酸割合の高い牛の確保や十分な肥育が不可欠である。

具体的データ

表1 山羊(n=10)の脂肪組織における脂肪酸組成

 

図1 山羊の脂肪組織におけるC17:1/C17:0とCLA/t11-C18:1との関係

 

図2 山羊の黄色骨髄と脂肪組織におけるC17:1/C17:0とCLA/t11-C18:1との関係

 

図3 反芻動物の体脂肪におけるCLA蓄積

その他

  • 研究課題名:粗飼料機能を活用した高付加価値牛肉の生産技術の開発
  • 予算区分:畜産対応研究[自給飼料基盤]
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)