ガスクロマトグラフィにおけるカラム温度の変更による牛肉中微量脂肪酸の同定法

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要約

脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィ(GC)分析において摂氏150、160、170、180度など恒温のカラム温度条件下の4つのクロマトグラムの比較から、不飽和結合数の推定や脂肪族アルデヒドとの識別が可能である。

  • 担当:九州農業試験場・畜産部・栄養・飼料研究室
           (九州沖縄農業研究センター畜産飼料作研究部栄養生理研究室)
  • 連絡先:096-242-7747
  • 部会名:畜産,畜産・草地
  • 専門:食品品質
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年、反芻動物に特徴的な共役リノール酸(CLA)という脂肪酸がガン予防効果を有するということで注目されている。しかし、牛脂肪中含有量は1%以下と微量であり、油脂給与牛の腎脂肪でCLAとC20:1は重複する。(図1:保持時間36.4分前後の矢印部分のピーク)これら微量脂肪酸の定量に際しては重複ピークの確認が不可欠であるが、一般的な水素炎イオン化検出器のGC測定では困難であり、その分析法が求められている。

成果の内容・特徴

  • 脂肪酸は脂肪酸メチルエステル、リン脂質のプラズマロゲン由来の脂肪族アルデヒドはジメチルアセタール(DMA)に変換し、キャピラリーカラム「Chrompack製CP-Sil88forFAME」で測定した。なお、DMAは酸性触媒(例:塩酸メタノール法など)によるメチルエステル化によって産生される。
  • カラム温度を高くすることによって各脂肪酸の保持時間は2次曲線的に短縮されるが、その変化には違いがあり、出現順序の入れ替わりが確認される。(表1)
  • 飽和脂肪酸を基準とするECL値は、カラム温度条件(恒温分析)の上昇に伴って、不飽和結合数の多い脂肪酸ほど増大し、脂肪族アルデヒドは減少する(図2)。特定の脂肪酸について温度条件とECL値の関連を調べることにより、その不飽和結合数を推定できる。
  • 数段階の温度条件で重複ピークの出現がないことを確認することによって、単独ピークであることを推定することができる。

成果の活用面・留意点

  • 水素炎イオン化検出器のGC測定で微量脂肪酸の測定を実施する場合に有効である。
  • ECLの算出に際し、対象ピークを挟むような脂肪酸を基準とすることが望ましい。
  • 保持時間は隣接ピークの影響を受け、大きなピークの後では幾分遅くなる傾向がある。表2に示した数値は単なる例示と考え、それぞれの測定条件での検討が必要である。

具体的データ

図1 なたね油Ca石鹸給与腎肝脂肪の脂肪酸メチルエステルのマスクロマトグラム

 

図2 カラム温度差摂氏20度によるECLの違いと不飽和度との関係

 

表1 各カラム温度におけるC18:2からCLAまでの保持時間と相対炭素鎖長

 

表2 脂肪酸とアルデヒドDMAのELC値の測定

 

その他

  • 研究課題名:自給飼料給与および仕上げ肥育の早期化が牛肉中化学成分に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:経常・新技術地域実用化研究
  • 研究期間:平成12年度(平成12~15年度)