トマト黄化葉巻ウイルスの系統識別法

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要約

トマトの重要病原であるトマト黄化葉巻ウイルスは分子特性から北部九州の長崎系統および東海地域の静岡系統の2系統に分けられる。PCR法を基に、これら2系統を簡易に識別する2つの方法を確立した。

  • 担当:九州農業試験場・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研究室
           (九州沖縄農業研究センター地域基盤研究部病害遺伝子制御研究室)
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:病害虫
  • 専門:作物病害
  • 対象:果菜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

トマト黄化葉巻病(病原ウイルス:トマト黄化葉巻ウイルス,TYLCV)は,1996年の初発生以来発生拡大を続け,北部から中部九州にかけて急速に蔓延して大きな問題となっている。日本に発生するTYLCVはTomatoyellowleafcurlvirus-Israel(TYLCV)1種であるが,分子特性から北部九州の長崎系統(Ng)および東海地域の静岡系統〈Sz)の2系統に分けられる。系統により病徴発現の強弱や宿主範囲に違いがあるため,その識別は有益な情報となる。また,本病新発生地における病原ウイルスの感染経路を明らかにする上でも系統識別は重要な指標となる。そこで,PCR法を基に簡易な系統識別法を確立する。

成果の内容・特徴

  • トマトからの全核酸簡易抽出法(九州農業研究成果情報第15号)とPCR法を基に2つの方法を開発した。
  • 第一は,NgおよびSzに特異杓なプライマー(それぞれNTGおよびSTGプライマー)によりPCRを行うもので,これにより系統識別が可能である(表1,図1)。
  • 第二は,ジェミニウイルスのゲノム成分増幅のためのユニバーサルプライマー(BMプライマー)により,TYLCVゲノムのほぼ全長を増幅し,4種類の制限酵素を用いてPCR産物の切断パターン(PCR-RFLP)を調べるもので,これによっても系統識別が可能である(表1,図2)。
  • 上記2法による系統識別により,日本に発生するTYLCV2系統は,九州および三重県以東の2地域に分かれて分布することが実証された(表2)。

成果の活用面・留意点

将来,2系統を親とする組換えウイルスが出現した場合にも,BMプライマーによるPC産物の制限酵素切断パターンの変化を調べることによって,組換えが起こったかどうか判断できる。

具体的データ

表1 TYLCVの系統特異的検出およびゲノム成分の増幅に用いたプライマー

 

図1 系統特異的プライマーを用いたPCRによるNg,Szの特異検出

 

図2 TYLCV各株の制限酵素切断パターン

 

表2 PCRおよぴPCR-RFLPによるTYLCV各分離株の系統識別

その他

  • 研究課題名:トマト黄化葉巻病の防除に関する研究
  • 予算区分:小事項
  • 研究期間:平成12年度(平成12~14年)