飼料畑における地力窒素の活用と夏作の減肥による窒素溶脱低減

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要約

暖地多雨地帯の飼料畑では地力窒素の活用と夏作の減肥によって、生産性の維持と窒素溶脱の低減を両立させることができる。

  • 担当:九州農業試験場・畑地利用部・生産管理研究室(九州沖縄農業研究センター畑作研究部生産管理研究室)
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:飼料作物類・牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

暖地多雨地帯の飼料畑では、多雨期に窒素が多量に溶脱する危険性が高い。そこで窒素溶脱を低減しながらも、年間を通じて高収量を維持するために、低温少雨の冬作期間に有機物を含め重点的に窒素を施用し、高温多雨の夏作期間は地力窒素で生産を維持する体系をライシメータ、試験場内圃場で検討するとともに、畜産農家圃場で適応性を検討した。

成果の内容・特徴

  • 6t/10a/年の牛ふん堆肥を長期連用した場合、全窒素施用量に対する作物吸収と溶脱の窒素量の合量の割合は施肥体系に関わらず一定である。施肥体系の改善により作物吸収への配分が高くなる(図1)。
  • 冬作期間の窒素溶脱量は、浸透水量が少ないため施肥体系に関わらず極めて少ない(図1、図2)。
  • 夏作期間の窒素施用量を低減しても、夏作の窒素吸収量は同等であり、その結果、年間を通しての浸透水の硝酸態窒素濃度は10mg/L以下に低下する(図1)。
  • 牛ふん堆肥の連年施用量を増加しても、イタリアンライグラスの窒素吸収量の増加は小さいことから、冬作期間の地力窒素の放出は少ない。冬作のイタリアンライグラスの窒素吸収量は冬作期間の無機態窒素施用量に支配される(図1、図2)。
  • 夏作減肥下では牛ふん堆肥の連年施用量が夏作の窒素吸収量に反映し、夏作の窒素吸収量は地力窒素に支配される(図2)。
  • 農家慣行のトウモロコシ栽培畑においても、窒素吸収量は化学肥料の窒素施用量を大きく上回るとともに作付前の堆肥施用量とも対応しないことから、地力窒素に支配されているとみなされた(図3)。
  • 同じ農家圃場で化学肥料無施用で栽培した結果、窒素吸収量が平均83%、乾物収量は平均88%を確保し、2.8~6.4kg/10aの窒素負荷低減となった(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 南九州のクロボク土で得た結果である。
  • 具体的な減肥量の設定のために、地力窒素からの窒素供給量を迅速に診断する方法を検討する必要がある。
  • 飼料の品質を維持するため、牛ふん堆肥施用分のカリを減肥する必要がある。

具体的データ

図1 施肥体系が窒素収支に及ぼす影響(ライシメータ・’81.10~’94.10)

 

図2 夏作減肥下における牛ふん堆肥連年施用量が窒素収支に及ぼす影響(試験場内圃場・’96.10~’00.9)

 

図3 農家トウモロコシ栽培畑の窒素収支(宮崎県都城市月野原台地・’99.4~’99.8)

その他

  • 研究課題名:飼料作物周年栽培下における各種土壌の養分動態予察法の解析
  • 予算区分:経常、地域総合(環境保全型)
  • 研究期間:平成12年度(平成2~9年、8~12年)