菊池川水系各流域からの土壌流出量

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要約

菊池川水系各流域において降雨時の土壌流出量を実測し、アメダス降雨データを用いて年間土壌流出量を試算すると、農耕地利用が畑作を中心とする流域は4.0t/ha/年、水田が畑作以上の割合を占める流域は1.8t/ha/年である。

  • 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌資源利用研究室
           (九州沖縄農業研究センター環境資源研究部土壌資源利用研究室)
  • 連絡先:096-242-7764
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 分類:研究

背景・ねらい

九州は年間雨量が多くかつ台風等の大雨にしばしば見舞われるため、土壌侵食が発生しやすい。本研究では河川に設けた調査地点で流去土壌量を実測し、流域単位での年間土壌流出量を算出して、土地利用等の流域特性と土壌流出量の関係を解明する。

成果の内容・特徴

  • 熊本県北部の黒ボク土地帯を流れる菊池川水系の7地点(図1、表1)で河川濁度を定期調査した(図2)。調査日と前日の合計雨量が40mm以下の場合は何れの地点でも濁度は小さく、雨量が40mmを越える場合は、農耕地を流域に含む地点2~7では2~85ppm(地点の平均値21~33ppm)であるのに対し、流域のほとんどが森林の地点1では12ppm以下(平均値8ppm)の値となる。
  • 調査地点のうち3つを選び、大雨時に降雨の開始から終了まで連続して、2時間程度の短時間間隔で濁度と流量の調査を行い、土壌流出量を実測した(図3)。畑作を中心とする農耕地利用の流域(地点4)では、土壌流出は常に一降雨の総雨量と比例して発生する。これに対し、水田が畑作以上の割合を占める流域(地点5、7)は総雨量100mm以下の場合は土壌流出量が小さく、100mmを越えると土壌流出が総雨量と比例して発生する。
  • 過去20年間のアメダス降雨データと図3の回帰式に基づき、年間土壌流出量を試算すると畑地流域は4.0t/ha/年、水田流域は1.8t/ha/年となる(表2)。この値は国土資源プロジェクトの土壌流出予測式による値(9-11t/ha/年)に比べ小さく、また土地利用の異なる流域間での土壌流出量の差が現れている。

成果の活用面・留意点

  • 雨量と土壌流出量の関係式は、流域単位での土壌侵食量推定の上で活用できる。
  • 黒ボク土主体の流域で得られた結果である。

具体的データ

図1 調査地点  

図2 雨量と河川濁度 図3 一降雨あたりの雨量と土壌流出量の関係

 

表1 各流域の土地利用

 

表2 年間の土壌流出量推定値

その他

  • 研究課題名:温暖地畑作地帯における土壌流出の定量的評価
  • 予算区分:環境研究(貿易と環境)
  • 研究期間:平成12年度(平成8~12年)