水田土壌から分離した新種メタン生成古細菌Methanoculleus chikugoensis
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要約
水田土壌より純粋分離したメタン生成古細菌MG62株は不規則な球状の細胞で,水素+二酸化炭素等を利用する。16S rDNAの塩基配列の類似度及びDNAの相同性の比較により,新種であることが分かり,新種名Methanoculleus chikugoensisを提案する。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
(九州沖縄農業研究センター環境資源研究部土壌微生物研究室)
- 連絡先:096-242-7765
- 部会名:生産環境
- 専門:土壌
- 対象:微生物
- 分類:研究
背景・ねらい
メタンは地球温暖化ガスであり,水田はその重要な発生源の一つである。水田からのメタン発生の抑制のためには,水田土壌に生息するメタン生成古細菌の種類とその特性を明らかにすることが最も基本的な課題である。これまでの分離例が極めて少ないMethanomicrobiaceae科のメタン生成古細菌を水田土壌から分離・同定し,その特性を明らかにし,水田からのメタン発生抑制のための基礎的知見を得ることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 九州農業試験場(筑後)の有機物連用試験水田圃場の稲わら堆肥連用区から採取した土壌を接種源として,2-プロパノール+二酸化炭素を基質とした集積培養を行い,ロールチューブ法でメタン生成古細菌MG62株を純粋分離した。
- MG62株は不規則な球状の細胞形態を示し(図1),メタン生成の基質として,2-プロパノール+二酸化炭素以外に,水素+二酸化炭素,ギ酸等を利用する(表1)。
- これらの形態や生理的性質,さらに極性脂質の特徴は,Methanomicrobiaceae科に属するメタン生成古細菌が示す性質に類似していたが,最適温度や糖脂質に違いがある。
- DNAのG+C含量は62.2 mol %である。16S rDNAの塩基配列の解析では,MG62株はMethanoculleus属の菌株との間で94~98%の類似度を示す。
- Methanoculleus属の既存種の基準株とMG62株との間のDNAの相同性は全て50%以下と低い(表2)。
- これらの結果,MG62株はMethanoculleus属の新種と考えられ,新種名Methanoculleus chikugoensisの提案を行った。
成果の活用面・留意点
本菌株は理化学研究所微生物系統保存施設及びドイツ微生物・培養生物保存機関に寄託(それぞれ菌株番号JCM 10825及びDSM 13459)しており,分譲により水田土壌のメタン生成古細菌の生態解明に広く活用される。
具体的データ



その他
- 研究課題名:Methanomicrobiaceae科メタン生成古細菌の水田土壌からの分離と同定
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成12年)