メタン生成古細菌のメタン生成過程における炭素の同位体分別

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要約

水田土壌から分離した3菌株のメタン生成古細菌の純粋培養下の,メタン生成過程における炭素の同位体分別⊿(基質δ13C-メタンδ13C)は,基質が水素+二酸化炭素の場合25~50‰,酢酸の場合11~18‰である。

  • 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室(九州沖縄農業研究センター環境資源研究部土壌微生物研究室)
  • 連絡先:096-242-7765
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景・ねらい

メタンの生成過程では炭素の同位体分別が生じる。水田土壌の主要なメタン生成基質である水素+二酸化炭素と酢酸からのメタン生成の同位体分別⊿(基質δ13C-生成物δ13C)には大きな差があることが風乾土の培養実験により示されており,発生するメタンのδ13Cの値からそれぞれの経路の寄与を推定できる。しかし,水田土壌から分離されたメタン生成古細菌について,メタン生成過程での炭素の同位体分別は測定されていない。そこで,水田土壌からの分離菌株を純粋培養し,メタン生成過程における炭素の同位体分別の大きさを明らかにして,同位体比分析を用いたメタン生成経路の解明へ活用する。

成果の内容・特徴

  • 九州農試(筑後)の試験水田圃場より分離したMethanobrevibacter arboriphilus SA株,Methanosarcina mazeii TMA株,Methanoculleus chikugoensis MG62株を用い,種々の基質を用い密閉系で培養し,メタンや基質の炭素同位体比を分析すると,炭素の同位体分別⊿(基質δ13C-メタンδ13C)は,基質が水素+二酸化炭素の場合では25~50‰であるが,菌株の種類により違いが見られる。酢酸が基質の場合には11~18‰と,水素+二酸化炭素の1/2~1/3程度と小さい(表1)。
  • ギ酸やメチル化合物からの同位体分別⊿は19~88‰と,酢酸からの場合と比べ大きい(表1)。
  • 上記データと水田土壌中のメタンのδ13Cの実測値,さらに水田土壌中の基質のδ13Cの文献値を用いて,水素+二酸化炭素と酢酸からの二つの経路のメタン生成への寄与率を試算すると,ほぼ同程度となる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 同位体比分析を用いたメタン生成経路の解明へ活用され,水田からのメタン発生抑制のための基礎資料となる。
  • 3菌株の分離株を用いた,密閉系での測定結果である。

具体的データ

表1 同位体分別⊿(基質δ13C-メタンδ13C)の大きさ

 

表2 メタンの生成経路の寄与率の試算例

 

その他

  • 研究課題名:同位体の高精度分析による土壌・作物の炭素・窒素の動態把握に関する研究
  • 予算区分:重点基礎
  • 研究期間:平成12年度(平成11年)