メタン生成古細菌Methanosarcina mazeiiの細胞壁分解酵素をコードする遺伝子

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要約

メタン生成古細菌Methanosarcina mazeiiの細胞壁(メタノコンドロイチン)分解酵素の遺伝子を単離し,塩基配列を決定した。120kDaのタンパク質をコードする,長さ3231bpの新規性の高い遺伝子である。

  • 担当:九州農業試験場・生産環境部・土壌微生物研究室
           (九州沖縄農業研究センター環境資源研究部土壌微生物研究室)
  • 連絡先:096-242-7765
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景・ねらい

メタンは地球温暖化ガスであり,水田はその重要な発生源の一つであるため,水田からのメタン発生の抑制は重要な課題である。メタン生成古細菌の細胞壁分解酵素による菌溶解機能を水田からのメタン発生の制御に活用することを目指し,水田土壌中に生息するメタン生成古細菌であるMethanosarcina mazeiiの細胞壁(メタノコンドロイチン)分解酵素の遺伝子を単離し,塩基配列を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • Methanosarcina mazeiiのTMA株(水田土壌からの分離菌株)に加え,S-6株(M. mazeiiの基準株)及びLYC株(細胞壁分解酵素が精製された菌株)のゲノムDNAより,完全長の細胞壁(メタノコンドロイチン)分解酵素遺伝子を含むDNA断片をクローン化し,その塩基配列をDNAシークエンサーを用いて決定した。
  • 各菌株で決定した塩基配列から推定されるアミノ酸配列には,精製酵素のN末端アミノ酸配列が含まれ(図),本遺伝子はM. mazeiiの細胞壁(メタノコンドロイチン)分解酵素の遺伝子である。
  • 遺伝子は3菌株ともに長さ3231bpで,1077アミノ酸からなる120kDaのタンパク質をコードしている。塩基配列およびアミノ酸配列の各菌株間の相同性は97~99%である。
  • アミノ酸配列のデータベースでの相同性検索の結果は,最も高いものでも26%程度(Azotobacter vinelandiiのマンヌロナンC-5-エピメラーゼとの間)であり,新規性が高い遺伝子である。

成果の活用面・留意点

  • メタン生成古細菌の制御に細胞壁溶解機能を活用するための基礎となる。
  • 特許出願(特願2000-70490,平成12年3月14日)。

具体的データ

図1 遺伝子の塩基配列から推定されるMethanosarcina mazeiiの3菌株の細胞壁(メタノコンドロイチン)分解酵素のアミノ酸配列。反転部は精製酵素のN末端アミノ酸配列。

 

その他

  • 研究課題名:メタン生成菌を溶解する機能を有する植物の開発,
                    メタン生成細菌の細胞壁分解酵素遺伝子の解析
  • 予算区分:先端技術開発研究(組換え・クローン),経常
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年,平成9~10年)