農業系窒素負荷による水質汚染に関するリスク指標の提案
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要約
畑作や畜産を主とする面源負荷が卓越した地域における水系の窒素汚濁を事前に予測するため、入手しやすい情報を元に算定できるリスク指標を提案する。
- 担当:九州農業試験場・生産環境部・資源評価研究室(九州沖縄農業研究センター環境資源研究部資源評価研究室)
- 連絡先:096-242-1150
- 部会名:生産環境
- 専門:環境保全
- 分類:行政
背景・ねらい
主に集約的な畑作・畜産を起源とする農業系窒素負荷による水系汚濁が顕在化しているが、農業系負荷の投入と流出の関係には時間遅れがある。そこで、水質汚濁の問題が顕在化する前に、水質汚濁が発生する可能性を評価するリスク指標の確立が必要である。
成果の内容・特徴
- 本指標は、3つの因子の乗算によって求められる。営農因子は、営農から発生する窒素流出負荷量を、流出因子は、降水量や蒸発量などを反映した自然的立地条件を、対象因子は評価対象を示す(図1)。
- 本指標は、対象地域への農業系窒素負荷が農地にすべて投入されていると仮定した場合の仮想的な地表水及び農地の地下水の窒素濃度を表す。主に畑作物、畜産ふん尿の影響を考慮したものである。
- 評価対象のスケールは、農業集落~市町村~河川流域である。対象水域は、河川水、および地下水である(図2)。
- 営農因子と対象因子は農業センサスや農林統計など基本的な統計資料から算出できる。また、九州沖縄地域における流出因子の値は水質指標算定マニュアル(仮称)を参照されたい。
- 算出結果は、窒素濃度(mg/l)で表され、感覚的に理解しやすい。また、分布図作成時における窒素汚染の危険性の判定は、算定されたポテンシャル窒素濃度に基づいて、0~3→軽微、3~6→小、6~10→中、10以上→大とした(図3)。
成果の活用面・留意点
- 各種データを更新することによって、最新の時点における農業系窒素負荷による水環境に対するリスクを広域にわたって、省力的に評価することができる。そのため、行政的な迅速な対応が可能となる。
- 施肥基準、流出率等の各種係数および計算の詳細については、必要に応じて見直しを行う。また、有機物の長期的な蓄積・分解による影響は考慮されていない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:暖地の畑作・畜産地帯の水質に関するMIの策定(平成8~12年)
- 予算区分:環境研究(貿易と環境)
- 研究期間:平成12年度(平成8~12年)