繁殖牛経営の所得増加に対する特定血統子取り用雌牛集積効果と省力化技術導入効果
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要約
市場評価の高い特定の血統を持つ子取り用雌牛の集積と同時に、省力化牛舎の導入と必要に応じた自給飼料生産基盤の拡大により、約611万円の所得を実現することができる。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
(九州沖縄農業研究センター総合研究部経営管理研究室)
- 連絡先:096-242-7695
- 部会名:農業経営
- 専門:経営
- 対象:家畜類
- 分類:指導
背景・ねらい
牛肉輸入自由化に伴う和牛子牛価格の低迷と繁殖牛農家の減少の中で、産地では、価格水準の維持上昇や出荷頭数の維持拡大に向けた取り組みが行われている。そこで、わが国最大の和牛子牛産地である南九州を対象に、市場評価の高い特定の血統を持つ子取り用雌牛の集積(以下、特定血統集積)や、産地において推進されている連動スタンチョンの設置が可能な省力化牛舎と作業能率の高い牧草収穫・調製機械の2つの省力化技術について、飼養頭数拡大や所得増加に対する効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 分析を行う繁殖牛経営モデルの主要前提条件を表1に示す。
- 自給飼料生産基盤が一定面積以上拡大不可の場合(図1)、平成11年度平均価格において約380万円(子取り用雌牛飼養頭数約35頭)の所得が実現できる。また、特定血統集積によって所得は413万円に増加する。さらに、省力化牛舎を導入した場合、所得は520万円(同70頭)に増加する。ただし、省力化牛舎の導入にともなって購入牧草に依存した経営展開となり、自給飼料収穫延べ面積が縮小し、TDNベースの飼料自給率が省力化牛舎導入以前の約70.1%から13.9%へ低下する。
- 必要に応じて自給飼料生産基盤の拡大が可能な場合(図2)、平成11年度平均価格において約443万円(同36頭)の所得が実現できる。また、特定血統集積によって所得は476万円に増加する。さらに、省力化牛舎を導入した場合、所得は611万円(同44頭)に増加し、購入牧草への依存も見られない。繁殖牛経営の所得増加のためには、必要に応じた自給飼料生産基盤の拡大が重要である。
- 必要に応じて自給飼料生産基盤の拡大が可能な場合、2つの省力化技術の導入によって、子取り用雌牛飼養頭数は52頭へ拡大する。しかし、固定費の増大により、特定血統集積によっても平成11年度価格において所得は約581万円となる。産地として和牛子牛出荷頭数をより拡大するためには、省力化技術導入に対する助成措置や共同利用等による機械稼働率向上等の、固定費軽減方策も重要となる。
成果の活用面・留意点
繁殖牛経営の育成および経営改善の指針として活用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:和子牛産地における担い手経営の摘出と展開条件の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年)