甘しょ直播栽培技術導入の経営的効果
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要約
甘しょ直播栽培技術を導入することによって、甘しょ生産の低コスト化を達成することができる。また、収穫時の雇用導入と3.6t/10a以上の収量を確保することにより、所得増加と作付面積拡大を同時に達成することができる。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
(九州沖縄農業研究センター総合研究部経営管理研究室)
- 連絡先:096-242-7695
- 部会名:農業経営・総合研究
- 専門:経営
- 対象:いも類
- 分類:研究
背景・ねらい
南九州の主要な商品作物であり、低施肥での生産が可能という意味で環境保全的作物である甘しょの作付拡大を目的として、加工用仕向を対象に、育苗、採苗、挿苗の各工程を省略することによる大幅な省力化を図るための直播栽培技術開発への取り組みが行われている。そこで、この技術を対象に、甘しょ生産に関するコスト変化や所得変化、また、農業経営全体としての所得変化等の経営的効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 甘しょ作のみを対象に、直播栽培技術導入による変化をフローチャートとして図1に示す。フローチャートから、ケース1:圃場貯蔵・無処理・委託なし・手作業つる切り-掘り取り機、ケース2:同・同・同・手作業つる切り-掘り取り機-労働力雇用(6人)を設定し、10aあたり生産費や総所得を慣行栽培(加工用)と比較すると、ケース1では10aあたり生産コストは慣行14.9万円から14.3万円へ4.0%低下するが、固定費増加と家族労働力のみによる規模制約により総所得は慣行163.5万円から119.1万円へ27.1%減少する(収量3t/10a、価格45円/kg)。ケース2では10aあたり生産コストは11.0万円へ26.1%低下し、総所得は274.6万円へ67.9%増加する。
- 農業経営全体に対する直播栽培技術導入による波及効果を分析するための主要前提条件を表1に示す。
- 慣行栽培の場合、甘しょ面積約219a、畑作延べ面積約364aとなり、慣行に替えて直播栽培を導入すると、所得最大化のもとで、収量3.6t/10a以上において、労働が競合する他の畑作物(トンネルごぼう等)よりも有利となり、甘しょ面積が約328aまで拡大し、畑作延べ面積も約515aまで拡大する(図2)。
- 農業所得は収量3.4t/10a以上において慣行の場合の約432万円を超え、4t/10aの場合、所得は約513万円まで増加する(図3)。甘しょ直播栽培技術導入により、農業所得を増加させ、同時に甘しょ作付面積を拡大するためには3.6t/10a以上の収量を安定的に確保することが重要になる。
成果の活用面・留意点
- 甘しょ直播栽培技術開発に対する収量目標の参考になる。
- 技術評価におけるフローチャート・チェックリスト法適用の際の参考資料となる。
- 畑作物価格の変動によって各作物の作付面積や所得が変化することに留意する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:甘しょ直播栽培の経営への波及効果の把握
- 予算区分:地域総合
- 研究期間:平成12年度(平成8~12年)