水質への環境負荷軽減費用の負担方法に対する非農家住民の意識
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要約
大淀川流域の非農家住民は、農業は環境にプラスの効果をより及ぼしていると認識しているが、水質に与える影響には厳しい評価を下している。しかし、水質への環境負荷軽減費用を農業者のみが負担することは、求めていない。
- 担当:九州農業試験場・総合研究部・農村システム研究室
(九州沖縄農業研究センター総合研究部農村システム研究室)
- 連絡先:096-242-7696
- 部会名:総合農業(経営、総合研究)、農業経営
- 専門:農村計画
- 分類:研究
背景・ねらい
環境負荷を軽減する農業技術の採用に伴って発生する費用の負担方法には、
の3つがあるが、いずれの方式を採択するかは政策課題であり、住民意識に強く影響される。ここでは、流域一帯の河川や地下水の水質悪化が取りざたされ、農
業もその原因の一部を担っているとされる大淀川流域の非農家住民を対象として実施したアンケートにより、農業の水質への環境負荷軽減費用の負担方法に対す
る意識を明らかにした。なおアンケートは、宮崎市、都城市の住民を対象とし、電話帳を用いて年齢・性別人口構成(国勢調査)に応じて400名の協力者を募
集し、1998年に実施した(回収率86.8%)。
成果の内容・特徴
- 農業が環境に及ぼすプラス効果はいずれも肯定的に評価されているのに対し、マイナス効果に対する同意の程度は総じて低く、総合的に評価すると、農業は環境にプラスの影響を及ぼしているという認識が一般的である。マイナス効果のなかでは「河川等の水質に悪影響」に対する同意の程度が最も高い。(図1、図2)。
- 農業の水質環境への負荷軽減対策は、行政や住民を含めた地域社会の責任で講じるべきという意識が、農業者の責任で講じるべきという意識よりも支配的である。この傾向は、総合的に評価すると農業が環境にプラスの影響を及ぼしていると考える者に強い。(図3)
- 農業の水質環境への負荷軽減対策費用(世帯あたり年間3,000円と想定)を支払う意志を持つ者は42.4%と、過半に達しない。しかし、支払う意志のない者56.2%のうち、より低い額なら支払っても良いとする者が11.0%、行政や農業団体が負担すべきと考える者が36.9%で、農業者のみが費用を負担すべきと考える者は4.0%にとどまる。(表1)
- このように、大淀川流域の非農家住民は、農業が水質環境に及ぼす負荷軽減費用を農業者のみが負担することは、求めていない。
成果の活用面・留意点
本成果で示したようなアンケートで住民意識を客観的に把握することによって、環境負荷軽減技術の普及方策を検討する際の参考にすることができる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:生産現場定着支援システムの確立
- 予算区分:地域総合(環境保全型)
- 研究期間:平成12年度(平成8~12年)