高温下でのマルトース生産が可能な固定化カンショβ-アミラーゼ

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要約

カンショβ-アミラーゼを固定化することで熱安定性が向上する。さらに、固定化プルラナーゼと併用することで雑菌の危険性がほとんどない摂氏60度の高温下でも長期間にわたって、安定的かつ効率的なマルトース生産が可能となる。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室
           (九州沖縄農業研究センター作物機能開発研究部食品機能開発研究室)
  • 連絡先:096-242-1150
  • 部会名:食品、総合農業(作物生産)、流通加工、畑作
  • 専門:加工利用
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンショ塊根には多量のβ-アミラーゼが含まれているが、現状では有効に利用されていない。本研究では、カンショβ-アミラーゼの工業的利用を目的として、β-アミラーゼの固定化酵素を調製し、それを用いた高温下でのマルトース製造基礎技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 酵素固定化用担体のキトパールBCW3505を用いると、142IU/g-担体の活性を有した固定化カンショβ-アミラーゼが得られる(図1)。
  • 固定化カンショβ-アミラーゼの至適温度は摂氏70度で、非固定化酵素(カンショ粉末抽出液)より摂氏20度高い(図2-a)。熱安定性も固定化により向上し、非固定化酵素より約摂氏10度上昇する(図2-b)。
  • 回転型カラムリアクター(図3)に固定化カンショβ-アミラーゼ及び固定化プルラナーゼ(Bacillus brevis由来、耐熱性)を充填し、雑菌の危険性がほとんどない摂氏60度の高温下で40%の高濃度液化澱粉溶液に作用させると、マルトース(収率70%以上)が生産される。繰り返し反応を行ってもマルトース生成率は14日間にわたって安定的である(図4)。

成果の活用面・留意点

本技術の実用化は新たな設備投資が必要などの問題がある。しかし、本固定化酵素調製法はマルトオリゴ糖生産用酵素等にも適用可能なことから、本技術は高温下での高付加価値のマルトオリゴ糖等を生産する技術開発に応用が可能である。

具体的データ

図1 固定化カンショβ-アミラーゼの調製法 図2 非固定化及び固定化酵素の温度特性

 

図3 回転型カラムリアクターの概略図 図4 回転型カラムアクター利用による固定化酵素の長期安定性

その他

  • 研究課題名:カンショβ-アミラーゼを用いたマルトース生産技術の開発
  • 予算区分 :大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間 :平成12年度(平成10年~12年)