カンショ塊根のアントシアニン生合成変異体における色素生合成遺伝子の発現異常

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

カンショ品種サニーレッドの塊根皮色変異体SRM97はアントシアニン生合成系のdihydroflavonol 4-reductase(DFR)遺伝子に変異を持ち、品種アヤムラサキの塊根肉色変異体AYM96は、アントシアニン生合成系の発現調節因子に変異を持つ。

  • 担当:九州農業試験場・畑作利用部・遺伝資源利用研究室(九州沖縄農業研究センター畑作研究部遺伝資源利用研究室)
  • 連絡先:0986-22-1506
  • 部会名:植物バイテク、畑作
  • 専門:バイテク
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カンショは塊根の皮色や肉色等に自然突然変異がよく生じることが知られている。これらの突然変異体は、形質の遺伝的背景の解明や、遺伝子の機能解析、有用遺伝子の単離等に有用である。また、カンショにの変異発生機構を解明することは将来的に培養変異等の抑制にも役立つと考えられる。本研究では、比較的解析が容易であると考えられる塊根におけるアントシアニン色素生合成の変異体を用い、カンショの変異機作について遺伝子レベルで解析した。

成果の内容・特徴

  • サニーレッド塊根皮色変異体SRM97(図1)はアントシアニン生合成系の酵素遺伝子であるdihydroflavonol 4-reductase(DFR)遺伝子に構造上の差異が認められる。また、DFR遺伝子の発現は正常なサニーレッドの塊根周皮部でのみ認められ、変異体では認められない(図3)。
  • アヤムラサキ塊根肉色変異体AYM96(図1)ではアントシアニン生合成系(図2)のchalcone synthase(CHS),chalcone isomerase(CHI),flavanone 3-hydroxylase(F3H),DFR,anthocyanidin synthase(ANS)の各遺伝子に構造上の差は認められないが、発現が抑制されている(図4)。
  • 以上の結果より、SRM97はDFR遺伝子に変異を持ち、AYM96は塊根内でのアントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現調節因子に変異を持つと判断される。

成果の活用面・留意点

  • SRM97は塊根周皮特異的な遺伝子発現を制御するプロモーターの単離に活用できる。
  • AYM96は塊根におけるアントシアニン生合成系の発現調節因子の単離に活用できる。
  • 他の塊根色素生合成の変異体に関しては個別に解析を要する。

具体的データ

図1 サニーレッド皮色変異体SRM97(上)とアヤムラサキ肉色変異体AYM96(下)図2 アントシアニンの生合成経路

 

図3 サニーレッドとSRM97におけるDFR遺伝子の構造(A)および発現量(B)の比較  図4 アヤムラサキとAYM96のアントシアニン生合成系遺伝子の発現量の比較

その他

  • 研究課題名:イポメア属突然変異体の特性評価と生理・遺伝学的機作の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年(平成9~12年)