水稲湛水直播栽培の播種後落水管理による施肥窒素の動態

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲湛水直播栽培の播種後落水管理により基肥の速効性窒素は湛水管理に比べ表面流去、揮散が多く、播種後60日で3/4が消失し、水稲による利用率は10%に満たない。しかし、追肥の速効性窒素肥料および基肥の被覆尿素肥料は溶出も含め落水管理の影響を受けない。

  • キーワード:水稲湛水直播、落水管理、速効性窒素、基肥、被覆尿素肥料
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:0942-52-0681
  • 区分:共通基盤・土壌肥料
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

水稲の湛水直播栽培においては出芽・苗立ちを安定させるため播種後に落水管理を行うが、落水管理が施肥窒素の動態に及ぼす影響は詳細には明らかになっておらず、不明な点が多い。そこで、落水管理が速効性窒素および被覆尿素の動態に与える影響について重窒素標識肥料を用いて明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 水稲湛水直播栽培の播種後落水管理により基肥として施用した速効性窒素は、播種後60日で表面流去により18%、揮散で56%がそれぞれ失われ、全体として3/4が消失し、湛水管理の2倍程度の消失率となる。さらに、水稲による利用率は播種後30日目以降、ほとんど変わらず60日目には7%と湛水管理の1/5にまで低下する。しかし、速効性窒素の追肥は落水管理の影響を受けず、水稲による利用率も40~60%と高い(表1、図1)。
  • 基肥としてリニア型100日タイプ被覆尿素肥料またはシグモイド型100日タイプ被覆尿素肥料を用いると、その溶出率、水稲による利用率、土壌への残存率および消失率は湛水管理とほとんど変わらず落水管理の影響を受けない(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地の湛水直播栽培において、播種後落水管理を導入する際の施肥設計の参考資料となる。
  • 細粒灰色低地土を用いたポット栽培の単年度試験結果である。
  • 播種後60日目の水稲生育ステージは幼穂分化期である。

具体的データ

表1 施肥窒素の収支(代かき播種後60 日目)

 

図1 水稲による基肥窒素の利用率の推移

その他

  • 研究課題名:代かき同時直播栽培における省力施肥管理技術の開発
  • 予算区分:21世紀プロ7系
  • 研究期間:1997~2003年度(平成9~15年度)
  • 研究担当者:西田瑞彦、土屋一成、森泉美穂子
  • 発表論文等:1)西田・土屋(2001) 日土肥学会講要 47:381
                      2)西田・土屋(2002) 日土肥学会講要 48:244