乾燥サツマイモ主体飼料による肉牛肥育
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要約
黒毛和種去勢牛に対しサツマイモ主体の飼料(脂肪酸カルシウムと尿素を添加)を給与することにより、粗飼料の摂取量が多く、良好な増体を示す。またロース芯面積の大きい、皮下脂肪の少ない、そして良好な食味性を有する肉質のものが生産される。
- キーワード:カンショ、サツマイモ、肉牛、肥育
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・栄養生理研究室、トヨタ自動車(株)・バイオ緑化事業部
- 連絡先:096-242-7747
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
肉牛肥育用飼料穀物の調達先が北米に偏重しており、生産国の天候による価格変動など、肥育経営を不安定なものとしている。
近年、サツマイモの効率的な乾燥技術が開発されたことにより、南九州畑作地帯や近隣の亜熱帯地域での生産が可能なサツマイモが、飼料資源として再評価されることとなった。
そこで、肉牛肥育における乾燥サツマイモ利用の可能性、さらにその肥育成績に及ぼす影響などを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 乾燥サツマイモに対し、エネルギー補給のための脂肪酸カルシウムと、反芻胃内での急激な乳酸発酵を中和する易発酵性窒素源としての尿素を添加することにより、良好な肉牛肥育用の濃厚飼料(風乾物中TDN73%,CP12%)となる(表1)。
- 同一種雄牛の産子である黒毛和種去勢牛(試験開始体重:317kg・46週齢)2頭ずつに各試験飼料を制限給与すると、サツマイモ主体飼料の60%区における粗飼料摂取量は極めて多く、良好な増体を示す(表2)。
- サツマイモ主体飼料は尿素が0.9%配合されていたものの、60%区の血漿UN濃度が低い値で推移した(図1)。サツマイモ主体飼料中の粗蛋白は有効に利用される。
- サツマイモ主体飼料の給与により大きな枝肉が生産される(P=0.068)。皮下脂肪はトウモロコシ主体の0%区でやや厚く、逆に体腔内脂肪は60%区で多い傾向を示す(表3)。
- ロース芯粗脂肪含量は60%区が高く、次いで30%区となった(表3)。サツマイモ主体飼料の給与により優れた肉質のものが生産される。
- 首都圏の主婦80人を対象にした食味評価では、しゃぶしゃぶ(ウデ部位)、焼肉(ウチモモ部位)のいずれの調理方法においても、30%区および60%区の牛肉の評価順位が優れた(表4)。すなわち、サツマイモ主体飼料で生産された牛肉は良好な食味性を有する。
成果の活用面・留意点
- サツマイモ主体飼料を給与した場合、粗飼料の採食量が多くなることから、粗飼料の多量摂取による基礎的な体づくりを促進すべき肥育前期の給与濃厚飼料として特に適している。
- 添加物の影響によるものか否か不明であるが、嗜好性が必ずしも良好ではないため、群飼の場合各牛の採食状況の把握が不可欠である。
具体的データ





その他
- 研究課題名:カンショの飼料化に関する研究・自給飼料給与および仕上げ肥育の早期化が牛肉中化学成分に
及ぼす影響の解明
- 予算区分:経常・交付金
- 研究期間:1998~2000年度・2000~2003年度
- 研究担当者:常石英作、柴 伸弥、松崎正敏、鳥居伸一郎、原慎一郎