ユーチャリスを加害するオモトアザミウマの被害
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要約
沖縄県下で栽培されているユーチャリスでは、オモトアザミウマによる被害が著しい。本種による被害は花、蕾、苞、茎、葉に見られ、花と蕾では加害部が褐変し、著しい場合には奇形花となる。苞は開花前に黄変し、開花時までに枯死する。花茎と葉では灰白色の条斑が生じる。
- キーワード:オモトアザミウマ、ユーチャリス、花の被害
- 担当:九州沖縄農研・野菜花き研究部・上席研究官
- 連絡先:0942-43-8271
- 区分:九州沖縄農業・病害虫、野菜花き
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
ユーチャリスは結婚式のブーケなどに利用される清楚な花で、主に沖縄県の北部地域で栽培されており、特産品となっている。しかし、需要の多い結婚式シーズンの秋期、春期には開花が不安定なことや病害虫による被害が多く、安定した生産ができない現状にある。そこで、安定生産技術の確立を目的とし、現地ほ場において害虫による被害実態を調査し、重要害虫を特定する。
成果の内容・特徴
- 沖縄県下で栽培されているユーチャリスでは、オモトアザミウマ(Taeniothrips eucharii (Whetzel))による花の被害が著しく、調査した東村(7ほ場)、宜野座村(1ほ場)、具志川市(1ほ場)のいずれにおいても高率で被害が確認され、安定生産の大きな阻害要因となっている(図1、表1)。また、ハスモンヨトウ、アフリカマイマイ、ナメクジによる被害も一部に見られるが、大きな問題とはなっていない。
- オモトアザミウマは、東海以南の西日本、台湾、韓国、ハワイなどに分布し、ヒガンバナ科、ユリ科、キク科等が寄主とされる。わが国では徳島県においてオモトに発生した記録があり、花芽、花、葉芽に寄生・加害し、葉に不整形の灰白色斑点を生じることが報告されている(加々美:1987)。本種の体長は、雌1.5-1.9mm、雄1.1-1.4mmで、体色は全体に暗褐色である。幼虫は桃白色を呈し、老熟幼虫の体長は1.8-2mmである。
- オモトアザミウマの加害を受けた花弁と蕾は被害部が褐変し、著しい場合は奇形花となる(図2、3)。また、蕾を被っている苞は開花前に黄変し、開花時には褐変枯死する。花茎や葉では灰白色の条斑を生じる。
- オモトアザミウマは10月から5月までの間、いずれの時期においてもユーチャリスの花や開花直前の蕾で寄生が確認される(表1)。また、出蕾直後の蕾でも成虫、幼虫の寄生が12~30%で見られたことや寄生の見られない蕾を室内に保存しておくと3~6日後に幼虫の孵化が確認されたことから、本種はユーチャリスの出蕾後まもない時期から蕾に飛来して産卵するものと推察される(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 本種はほぼ周年発生し、出蕾直後から寄生・加害すると考えられることから、出蕾時期を逃さずに早期に防除する必要がある。
- 本種に有効な薬剤を探索し、防除方法を確立する必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:生産安定のための病害虫防除技術の確立
- 予算区分:地域総合亜熱帯野菜花き
- 研究期間:1998~2002年度
- 研究担当者:柏尾具俊、北村登史雄(現在 野菜茶業研究所)
- 発表論文等:1)北村登史雄・柏尾具俊(2000)九病虫研会報46:51.
2)柏尾具俊・北村登史雄(2001)九病虫研会報47:178.