酸素発生剤と薬剤を混和被覆した水稲種子の打込み播種時の剥離程度と出芽性
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要約
代かき同時土中点播栽培においてイミダクロプリド剤と酸素発生剤を混和被覆した種子を使用する場合は、薬剤の混和被覆による種子の出芽阻害及び被覆剤の剥離という両方の悪影響が少ない標準乾燥条件・標準混和方法が適する。
- キーワード:水稲、湛水直播、出芽、剥離、酸素発生剤、イミダクロプリド剤
- 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・機械化研究室
九州沖縄農研・水田作研究部・水田作総合研究チーム
- 連絡先:0942-52-0692、0942-52-0694
- 区分:九州沖縄農業・水田作
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
水稲湛水直播栽培ではウンカ類の防除法の一つとして酸素発生剤にイミダクロプリド剤(商品名アドマイヤー水和剤)を混和する技術が普及している。また、苗立ちの安定を目的としてヒドロキシイソキサゾール剤(商品名タチガレエース粉剤)を混和する技術が確立している。しかし、種子の乾燥程度や混和方法によっては出芽率に影響を与えたり、代かき同時土中点播栽培では打込み播種時に被覆剤の剥離が増加することが懸念される。このため、酸素発生剤と薬剤の混和方法が被覆剤の剥離程度および種子の出芽性に及ぼす影響を検討する。
成果の内容・特徴
- 打込み式点播機を用いて被覆種子を播種した時に剥離する被覆剤の質量割合(剥離率)は、打込み速度が早いほど、また、被覆種子が乾燥しているほど高い。薬剤を混和した場合の剥離率は、イミダクロプリド剤の場合、全層混和>標準混和>簡易混和の順で高いが、ヒドロキシイソキサゾール剤では大幅な増加は認められない(図1、表1)。
- 温度20℃、播種深度10mmの湛水直播・自然落水条件下でポット試験した被覆種子の出芽率は、被覆種子が過乾燥条件では差は認められないが、標準・無乾燥条件ではイミダクロプリド剤を混和した場合に出芽率が劣る傾向があり、被覆種子の貯蔵期間が長いほど、水分が高いほど出芽率が劣る。また、全層混和>標準混和>簡易混和の順で出芽率が高い。一方、ヒドロキシイソキサゾール剤を混和した場合は発芽率の低下は認められない(図1、表2)。
- 以上の結果、代かき同時土中点播栽培においてイミダクロプリド剤と酸素発生剤を混和被覆した種子を使用する場合は、薬剤の混和被覆による種子の出芽阻害及び被覆剤の剥離という両方の悪影響が少ない標準乾燥条件・標準混和方法が適する。
成果の活用面・留意点
- 出芽率は未剥離種子の試験データである。剥離が増加すればそれに伴う出芽率の低下や薬剤の効果の減少が予想されるが、それを考慮した検討は今後の課題である。
- イミダクロプリド剤の混和被覆の場合は、特に被覆種子の無乾燥条件での出芽率の低下が大きいので十分に注意する。
- 低温種子庫等の設備がなく過乾燥状態での種子保存を強いられる場合は簡易混和方法を薦める。また、その場合の播種時の打込み速度は、剥離率の増加を抑制するという点で10m/s以下とすることが適当である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:代かき同時土中播種機の多機能化技術の開発
- 予算区分:21世紀プロ7系
- 研究期間:1997~2003年度
- 研究担当者:田坂幸平、松島憲一、吉永悟志、関 正裕、高橋仁康、脇本賢三
- 発表論文等:1)田坂幸平・松島憲一・関 正裕・高橋仁康(2001)第64回九農研発表会
2)松島憲一・田坂幸平・吉永悟志・脇本賢三(2001)日作記70(2)、181-182