田畑輪換によるスクミリンゴガイの密度低減

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要約

水田転作にダイズを栽培すると、翌年のスクミリンゴガイ密度は著しく減少し、水稲の湛水直播や移植栽培を貝がいない場合と同じように行っても被害を回避できる。

  • キーワード:スクミリンゴガイ、被害、輪作、稲、ダイズ
  • 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫生態制御研究室
  • 連絡先:096-242-7732
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

スクミリンゴガイは東南アジアや日本の西南暖地で水稲に被害を与える重要害貝である。とりわけ直播栽培ではその被害が大きく、湛水直播栽培普及の大きな障害になっている。本貝は在来のタニシに比べて殻が薄く、乾燥や耕耘による機械的な破砕に弱く、1年間の転作により、その密度が低下する可能性がある。そこで、ダイズ転作後の水田を稲跡の水田と比較し、田畑輪換の貝密度低減に及ぼす効果を調べた。

成果の内容・特徴

  • 福岡県と熊本県の集団ダイズ転作地区での2年間の調査結果で、ダイズ跡水田では多くの場合、スクミリンゴガイは絶滅していないが、密度は著しく低かった。
    1年間の田畑輪換後のダイズ跡水田の貝密度は、例外なく湛水直播水田の要防除密度(0.5頭/m2、または最も厳しい出芽期の値である貝総重量1.5g/m2;九州沖縄農業成果情報16号参照)よりかなり低く、貝がいない場合と同じように湛水直播栽培を行っても被害がほとんど生じない(表1)。
  • 越冬貝は比較的小型の貝が多く、水稲跡では殻高が10~20mmの個体が大部分を占める。ダイズ跡水田では、それよりやや大きい傾向がある(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 西南暖地の水田転作率は現在約40%である。ダイズ跡等の田畑輪換後の水田に湛水直播を行うなど、計画的な圃場使用により省力・省コストの貝被害回避策が実現できる。
  • ダイズ跡に水稲湛水直播栽培を行う場合、水路からの貝侵入に注意する必要がある。貝の侵入が予想される場合は網袋などで侵入を阻止する。
  • ダイズ以外の畑作物でも同様な効果が期待できる。

具体的データ

表1 前年の作目(水稲およびダイズ)と水稲植え付け直後のスクミリンゴガイ密度

 

図1 ダイズ跡と水田跡での貝の殻高分布

 

その他

  • 研究課題名:大豆導入によるスクミリンゴガイ密度低減機構の解明と耕種的防除技術の開発
  • 予算区分:21世紀プロ7系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:和田節、市瀬克也、遊佐陽一、杉浦直幸
  • 発表論文等:和田ら(2001)応動昆第45回大会講要:95.