イネの疑似病斑突然変異体の耐病性

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要約

イネの突然変異体から選抜した疑似病斑突然変異体6系統は、いもち病及び白葉枯病に対して原品種より強い抵抗性を示す。そのうちの5系統は新しい疑似病斑突然変異遺伝子、Spl12(t)、spl13(t)、spl14(t)、Spl15(t)、spl16(t)を持つと推定される。

  • キーワード:イネ、疑似病斑突然変異体、いもち病、白葉枯病、抵抗性
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・稲育種研究室
  • 連絡先:0942-52-0647
  • 区分:九州沖縄・水田作
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

疑似病斑突然変異体のなかに、病害抵抗性が高まっている変異体があることが複数の作物で確認されている。そこで、原品種をヒノヒカリ、台中65号、コシヒカリとして得られた突然変異体を用いて、糸状菌(いもち病菌)及び細菌(白葉枯病菌)に対して抵抗性を示す疑似病斑突然変異体を選抜する。さらに、その突然変異遺伝子の遺伝様式を把握し、その育種的利用を図る。

成果の内容・特徴

  • 選抜した疑似病斑突然変異体6系統(H13、H7、T94、T96、T3、K6213)は、いもち病及び白葉枯病に対して原品種より強い抵抗性を示す(図1、図2)。
  • H13、K6213、T96、T3は疑似病斑が表れた後で、H7及びT94は疑似病斑が表れる前からいもち病及び白葉枯病(データ略)に対して抵抗性を示す(表1)。
  • H13、H7、T94、K6213、T3は、各々、新規の突然変異遺伝子、Spl12(t)、spl13(t)、spl14(t)、Spl15(t)、spl16(t)を持つと推定される(表2、対立性検定結果はデータ略)。

成果の活用面・留意点

  • 疑似病斑突然変異遺伝子Spl12(t)、spl13(t)、spl14(t)、Spl15(t)、spl16(t)を病害抵抗性発現機構の解明に利用することができる。
  • 遺伝子を単離し機能解析を進めるためには、新規の突然変異遺伝子の遺伝子座を同定する必要がある。

具体的データ

図1 白葉枯病菌(I群菌(T7174),III群菌(T7133))接種後3週間目の病斑長の比較

 

図2 いもち病菌(レース007)接種後12日目の病斑(WTは各々の原品種)

 

表1 いもち病菌( レース0 0 7 ) 葉鞘裏面接種後の菌糸の進展程度

 

表2 疑似病斑突然変異体の遺伝分析

 

その他

  • 研究課題名:イネの過敏感反応により誘導されるいもち病抵抗性突然変異遺伝子の解析と育種利用
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:溝淵律子、岡本正弘
  • 発表論文等:福岡ら(2000)育雑 2(別1):134.
    Mizobuchi-Fukuoka et al. (2000) The Annual Meeting of the American Society of Plant Physiologists 2000 p172.