トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の伝染源と成り得る2種雑草
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要約
熊本県三角町のトマト黄化葉巻病発生ハウス内に自生するウシハコベ、エノキグサから、PCR検定により高頻度でTYLCVの自然感染が検出された。本ウイルスの全塩基配列をトマトから同定した長崎系統TYLCVと比較したところ、2774塩基中2773塩基(99.9 %)が一致した。
- キーワード:トマト黄化葉巻病、TYLCV、自然感染、ウシハコベ、エノキグサ
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・病害遺伝子制御研究室
- 連絡先:096-242-7730
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
トマト黄化葉巻病は、わが国では1996年の初発生以来拡大を続け、九州では大分、鹿児島県を除くの5県で発生が確認され大きな問題となっている。TYLCVは、シルバーリーフコナジラミによって媒介され、特にトマトの促成栽培で大きな被害を与えている。海外ではTYLCVの自然感染植物の存在が知られているが、日本ではトマト、トルコギキョウ以外の自然感染植物の報告はない。そこで、重要病害であるトマト黄化葉巻病の伝染環を解明し防除に役立てるため、自然感染植物を調査し、感染個体から検出されたウイルスを確認する。
成果の内容・特徴
- 熊本県三角町のトマト黄化葉巻病発生ハウス内に自生するウシハコベ、エノキグサからTYLCVに特異的なPCR産物が高率に検出され、2種雑草のTYLCV感染が確認される(表1、図1)。ウイルス感染ウシハコベから採種した種子を播種した次代からは特異的なPCR産物が検出されず、ウシハコベでの種子伝搬はないと考える。
- 同様にエノキグサにもTYLCVに感染している株が確認される(表1、図1)。
- セイタカアワダチソウ、カラムシ、イチジク、ムラサキカタバミ、マルバツユクサ、イヌホオズキ、ヨモギ、オランダミミナグサ、ホトケノザ、ノブドウ、コヒルガオ、イヌビユでは、今回の検定ではTYLCV感染が確認されない。
- ウシハコベから分離したTYLCVの全塩基配列を決定し、複数の罹病トマトから分離した長崎系統TYLCVの全塩基配列と比較した結果、2774塩基中2773塩基が一致する。
成果の活用面・留意点
- ウシハコベ、エノキグサの除去を徹底することが、本病害防除には有効である。
- さらに他の雑草等の自然感染についても調査する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:トマト黄化葉巻病の防除に関する研究 病原ウイルスの特性解明
-野外宿主植物の探索-
- 予算区分:侵入病害虫
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:上田重文・大貫正俊(現国際セ沖縄)・花田 薫