カタグロミドリカスミカメの放飼によるトビイロウンカの密度抑制効果
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要約
ウンカ類の捕食性天敵カタグロミドリカスミカメをイネウンカ類の飛来侵入時期に1:1の害虫:天敵比率で1回放飼することで、放飼次世代のトビイロウンカ密度を抑制し、最終世代までのトビイロウンカ増殖率を無放飼の場合の半分以下に低下させることができる。
- キーワード:カタグロミドリカスミカメ、トビイロウンカ、天敵、生物的防除
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室
- 連絡先:096-242-7731
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
海外からイネウンカ類と共に飛来する天敵カタグロミドリカスミカメ(以下カタグロ)は、増殖能力が高くイネウンカ類の卵の捕食性天敵として有望と考えられる。とりわけ熱帯水田においてはカタグロの密度が高く、天敵の働きによりトビイロウンカ(以下トビイロ)の密度が低く抑えられているとされている。しかし、日本では長崎県西部などを除いてカタグロの飛来数が極めて少ないためその効果は低く、放飼試験もほとんど行われていない。そこで、ウンカの飛来侵入時期にあたる7月上旬に水田にトビイロとカタグロを1:1および2:1の比率で放飼して、天敵とウンカ類の発生推移を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 7月下旬のトビイロ第1世代の幼虫数はカタグロの放飼比率が高い区ほど低下し(図1、図2)、1:1放飼区では放飼次世代にかけてのトビイロ増殖率をマイナスに転じさせる(図3)。
- 9月下旬のトビイロ第3世代の幼虫数は、天敵放飼区では無放飼区より有意に低い(図1、図2)。天敵放飼区のトビイロ第0~第3世代にかけての増殖率は無放飼区の半分以下(200~300倍)である。
- イネウンカ類成幼虫数(トビイロとセジロウンカ(自然発生)の合計値)とカタグロ成幼虫数との間には正の相関がある(図4)。イネウンカ類の種構成は天敵放飼次世代(7月下旬)にはセジロが、第3世代(9月下旬)にはトビイロが主体であるので、カタグロの密度は7月下旬頃まではセジロに、それ以降はトビイロにそれぞれ依存することが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 天敵放飼次世代にイネウンカ類の密度が低いとカタグロが分散する傾向があるので、天敵の定着を促進させるためのバンカー植物等の方策を検討する必要がある。
- 複数回の放飼効果、放飼タイミングによる効果の変動などについて検討する必要がある。
- 人工飼料などによる天敵の大量増殖法が未確立なので、今後検討する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:天敵と高精度発生予察を利用した海外飛来性害虫の総合防除技術の確立
- 予算区分:IPM
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:松村正哉、浦野 知、鈴木芳人
- 発表論文等:1) 松村・鈴木 (1999) 九病虫研会報 45: 63-67.
2) 松村・浦野 (2001) 九病虫研会報 47: 49-53.
3) 松村・浦野・鈴木 (2001) 第11回天敵利用研究会講演要旨集: 16.