普通そばにおける難脱粒性の遺伝様式
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要約
普通そばには難脱粒性遺伝子座が2つ存在し、それぞれ独立遺伝する。難脱粒性遺伝子は劣性であり、そのうちの1つは自家不和合性遺伝子と約5.5%の組換え価で連鎖している。
- キーワード:そば、脱粒性、自家不和合性、連鎖
- 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・暖地特産作物研究室
- 連絡先:電話096-242-7741、電子メールmatsuik@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畑作、作物・夏畑作物
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
普通そばは異型花柱の自家不和合性作物であり、結実には蜂などの昆虫を媒介した交配が必要であるため、収量は天候により大きく左右される。そこで、普通そばに近縁野生種(Fagopyrum homotropicum)に由来する自家和合性遺伝子を、胚培養を利用して導入した。ところが、多くの自家和合性(自殖性)系統が脱粒性を示したため、難脱粒性の自家和合性そば系統の作出が求められている。そのため、難脱粒性の遺伝様式を解析した。
成果の内容・特徴
- そば近縁野生種Fagopyrum homotropicumに由来する自家和合性遺伝子を普通そば(牡丹そば)に導入して育成した自殖性系統九系SC2とO2AMU2はそれぞれ難脱粒性と脱粒性を示す(表1)。
- そばの脱粒性には2つの遺伝子が関与している。2つの遺伝子Btp1とBtp2は補足遺伝子でそれぞれ独立遺伝し、単独では難脱粒性になるが共存すると脱粒性となる(表1, 2)。
- 難脱粒性遺伝子btp1座は花型(自家不和合性)を支配する遺伝子と連鎖しており、その組換え価は最尤法により5.46±1.18(%)と推定される(表3)。
- 普通そば6品種に九系SC2を交配して得られたF1個体の脱粒性を調査した結果より、普通そば集団中にはBtp2およびbtp2の対立遺伝子が存在することが推定される(表4)。
- 難脱粒自殖性そば系統は2つの遺伝子のうち何れかを劣性のホモ型に持たせることにより育成できる。
成果の活用面・留意点
- 九系SC2を交配母本として使用する場合は、多くの場合F1で脱粒性を示すので、採種に工夫が必要である。一方、この形質は自家和合性系統維持のためのマーカーとして利用できる。
- F1で確実に難脱粒性にするにはbtp1をホモに持つ自家和合性系統を交配母本に使う必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:そばへの自殖性の導入
- 予算区分:遺伝資源(素材化)
- 研究期間:1998~2000~2002年度
- 研究担当者:松井勝弘、手塚隆久、原貴洋