抗酸化活性の高い紫カンショを選抜するための簡便な測定法

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要約

紫カンショ抽出液の抗酸化活性は、325nmにおける吸光度あるいは325nmと530nmの吸光度による重回帰に比例して高まる。抽出液の吸光度を測定するのみで抗酸化活性の高い紫カンショを簡便にスクリーニングできる。

  • キーワード:抗酸化活性、紫カンショ、選抜育種、アントシアニン、ポリフェノール
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・食品機能開発研究室
            九州沖縄農研・畑作研究部・遺伝資源利用研究室
  • 連絡先:電話096-242-1150、電子メールikuosu@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、作物・夏畑作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

紫カンショは、生活習慣病予防成分として期待されている抗酸化性物質(活性酸素・フリーラジカル等を消去する物質)を含んでいる。簡便な抗酸化活性評価手法としては、1,1-ジフェニール-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)法があるが、さらなる簡便化が育種の現場では望まれている。そのため、抗酸化活性と高い相関を示す測定法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 紫カンショの80%エタノール抽出液は、530nmと325nmに吸収極大をもつスペクトル特性を示す(図1)。これら特異的な吸収帯は、アントシアニジンおよびカフェオイル基に基づく。紫カンショのアントシアニン(YGM-1~YGM-6)には1個以上のカフェオイル基が含まれるため325nmに吸収極大を持つ。
  • 紫カンショ凍結乾燥粉末を80%エタノールで抽出する方法(方法A)では、抽出液のDPPHラジカル消去活性は、抽出液の530nm、325nmの吸光度に比例して高まるが、その相関は530nmよりも325nmの吸光度の方が高い(図2A、B)。
  • 530nmと325nmの吸光度による重回帰式から推定されたDPPHラジカル消去活性は、R=0.979の相関で実測値とほぼ一致する(図2C)。
  • 生イモに15%酢酸を加え抽出液を得る方法(方法B)でも、同様な結果が得られる(図3)。
  • 325nmにおける吸光度、あるいは325nmと530nmの吸光度との重回帰式からの推定値の高いサンプルは、実測のDPPHラジカル消去活性も高い。これら指標を用いれば、抗酸化活性の高い紫カンショを簡便にスクリーニングできる。

成果の活用面・留意点

  • 紫外-可視分光光度計を用いる本法は抗酸化活性の高い紫カンショを選抜するのに有用な手法である。シアニジン型、ペオニジン型が混在していても良い。325nmと530nmの重回帰を用いた方法でも良いが、簡便な325nmの吸光度測定のみでも十分に適用できる。方法A、方法Bの選択は自由であるが、長時間放置する必要がある場合には方法Bを採用する。
  • 図2の母集団(方法A)で得られた重回帰式を年次・品種等の異なる別の母集団に適用した場合、その活性推定値はR=0.977の相関で実測値とほぼ一致する。325nmの吸光度を用いても、その活性推定値はR=0.927の相関で実測値とほぼ一致する。
  • 本法は紫カンショの抗酸化活性を推定するのに特に有効である。有色バレイショの場合には相関が弱く、また赤系統、紫系統に分けて推定する工夫が必要である。

具体的データ

図1.紫カンショ抽出液およびその抗酸化主要成分の紫外-可視スペクトル

 

図2.紫カンショ抽出液(方法A)のDPPH ラジカル消去活性と530nm(A)、325nm(B) および重回帰式から推定した活性(C)との相関

 

図3.紫カンショ抽出液(方法B)のDPPH ラジカル消去活性と530nm(A)、325nm(B) および重回帰式から推定した活性(C)との相関

その他

  • 研究課題名:高付加価値加工食品創出のための暖地農産物の有用特性の評価、
                      アントシアニン高色素・高安定化育種素材の開発*
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1998~2002年度、2001~2005年度*
  • 研究担当者:須田郁夫、沖智之、納美由紀、増田真美、小林美緒、佐藤哲生、古田收、西場洋一、高畑康浩、
                      吉永優、田中勝、熊谷亨
  • 発表論文等:1)Oki et al. (2003) Breeding Science、53:101-107(2003)