飼料構成に基づく搾乳牛からの窒素排泄量推定プログラム

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要約

飼料構成から日本飼養標準(乳牛・1999年版)を基に、過剰な粗蛋白質摂取量および搾乳牛からの窒素排泄量を推定するための演算ソフトウエアである。飼料構成に応じた窒素排泄量が推定されるので、窒素排泄量低減のための飼料設計に利用できる。

  • キーワード:飼育管理、搾乳牛、窒素排泄量、飼料構成
  • 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・環境生理研究室
  • 連絡先:電話096-242-7748、電子メールmtmt@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

畜産集中地帯においては、家畜糞尿を環境保全的に適正利用した物質循環型営農システムの確立が望まれている。そのためには、家畜から排泄される糞尿および窒素量を精密に推定し、堆肥化等の適切な処理利用を行う必要がある。しかし、家畜から排泄される糞尿量および窒素量は飼料構成より変化することから、飼料構成に基づいて窒素排泄量を推定するためのプログラムを開発し、排泄量の低減に役立てる。

成果の内容・特徴

  • 12例のホルスタイン種泌乳牛の飼養試験データから、ふん尿中への窒素排泄量(y)と過剰なCPd(第一胃分解性蛋白質)摂取量(X:CPd摂取量-CPd要求量)の間には、y=0.0913x+199.5397(r=0.956)の関係が認められる(図1)。
  • このシートでは、乳量、乳脂率、給与飼料の構成および頭数などの入力データを基に日本飼養標準(乳牛1999年版)において示されている「飼料中に含ませるCPdの適正含量」から推定したCPd要求量と摂取量を上記式にあてはめ、ふん尿窒素排泄量を推定する(図2)。
  • 飼料構成に応じて窒素排泄量が推定できるので、飼料構成の改善による削減可能量が算定できる。また、堆肥の生産量も推定できる(図2)。
  • 本プログラムを用いて作成したCPd低含量の飼料を4頭の泌乳牛に給与しても乳量、乳生産効率に影響はない。乳成分のうち乳蛋白が少なくなるが、乳価に影響するほどは低下しない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 糞尿窒素排泄量からの飼料メニューの評価に活用できる。
  • 本プログラムは配布可能である。
  • 本プログラムの利用には、汎用表計算ソフトウエア(エクセル)が必要である。
  • 飼料中のCPd含量については、データが集積されつつある段階であるが、一般的な飼料については、日本標準飼料成分表等にその成分値が示されている。
  • 堆肥化過程で窒素損失が無い前提で堆肥生産量を推定している。

具体的データ

図1.ふん尿窒素排泄量と摂取蛋白質の関係

表1.低CPd 飼料が乳生産に及ぼす影響

 

図2.糞尿窒素排泄量の推定例

その他

  • 研究課題名:畜産地帯における家畜ふん尿の環境保全的利用技術の開発
  • 予算区分:調整堆肥
  • 研究期間:1998~2002年度
  • 研究担当者:塩谷繁、岩間裕子、田中正仁、神谷充、薬師堂謙一、田中彰浩
  • 発表論文等:1)酪農における環境負荷の低減.酪総研.269:6-7.2002.
                      2)糞尿排泄量低減を目指した乳牛の栄養管理.Dairy Japan.47(17):10-13.2002.