高Ca飼料給与時における分娩前後の乳牛の骨代謝
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要約
分娩前後の経産牛への高Ca飼料(Ca:0.87%)の給与は、血漿中Ca濃度に影響を与えないが、分娩後では低Ca飼料(Ca:0.49%)と比較し、骨形成マーカーのオステオカルシン濃度の低下を抑制し、骨吸収マーカーのデオキシピリジノリン排泄量を減少させる。
- キーワード:分娩前後、Ca、骨代謝、乳牛、家畜生理・栄養
- 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・環境生理研究室
- 連絡先:電話096-242-7748、電子メールyukoiwm@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・畜産草地(乳牛)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年、乾乳期のミネラル給与法として、飼料中カチオンアニオンバランス(DCAD)の考え方が導入されつつあり、分娩前に低Ca飼料を給与する従来慣行法とは異なる分娩前後を通じての高Ca飼料給与例も見られる。そこで、分娩前後の高Ca給与における体内でのCa動態を解明するために、分娩前後を通じて経産牛に高Ca飼料または低Ca飼料を自由採食させ、分娩前後の骨代謝および血漿中Ca濃度の変化を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 経産牛に対して、高Ca飼料(Ca:0.87%、P:0.31%、Mg:0.21%、K:2.10%)または低Ca飼料(Ca:0.49%、P:0.32%、Mg:0.18%、K:2.14%)を分娩予定日14日前から分娩後3日目まで自由採食させた場合(図1)、Ca摂取量による分娩前の骨代謝に対する明らかな影響は認められない(図2、3)。
- 高Ca飼料の摂取により、分娩直後からの骨形成作用の低下および骨吸収作用の活性化が抑えられる(図2、3)。
- 分娩前後の飼料中Ca濃度は、血漿中Ca濃度に明らかな影響を及ぼさない(表1)。
- 分娩前後の高Ca飼料給与は分娩後の骨吸収を低下させ、骨量低下を抑制することが示唆される。
成果の活用面・留意点
- 分娩前後のCa給与水準設定のための基礎データとなる。
- 分娩前の飼料設計については、分娩時の低Ca血症防止の観点から、Ca代謝に大きな影響を与える飼料中K含量などに十分な注意を払う必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:乳牛の飼養環境が乳成分およびその機能性に及ぼす影響
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1997~2002年度
- 研究担当者:岩間裕子、神谷充、田中正仁、塩谷繁