成畜の肥育は筋肉の不溶性コラーゲンを減少させて食肉を軟らかくする

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要約

成畜(4歳以上のヤギ)を肥育することにより、肥育しない場合と比較して筋肉内の脂肪含量が増加し、不溶性コラーゲン含量が低下することにより、食肉の硬さが改善される。

  • キーワード:肥育、コラーゲン、加熱溶解性、剪断力価、家畜生理・栄養、肉用牛
  • 担当:九州沖縄農研・畜産飼料作研究部・栄養生理研究室
  • 連絡先:電話096-242-7747、電子メールnshiba@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

筋肉内結合組織の主成分であるコラーゲンは、加齢にともなう分子間架橋形成により加熱溶解性が低下し、食肉を硬くすることが知られている。しかし一方、肥育された成畜から生産された食肉は、一般的にテクスチャーに優れ、軟らかいとされる。そこで、肥育と食肉のテクスチャーとの関係を明らかにするため、成去勢ヤギ10頭(雑種、平均月齢63ヵ月齢、平均体重37.8kg)を成畜のモデルとして用いて、イタリアンライグラス乾草および市販配合飼料を飽食とする区と維持量給与する区の2区に分けて90日間飼養し、成畜に対する肥育が食肉の硬さやコラーゲン性状に及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 試験期間中の増体は、飽食区が高い値(飽食区0.21kg/日、維持区0.02kg/日)となる。
  • 肥育することにより、筋肉の水分含量が低く、脂肪含量が腓腹筋を除いて有意に高い値となる(図1)。
  • 筋肉内総コラーゲン含量および不溶性コラーゲン含量は、肥育することによって低い値を示すが、可溶性コラーゲン含量は影響を受けない(図2)。
  • 成畜に対する肥育は、筋肉内への脂肪の付着と不溶性コラーゲン含量の低下により、胸最長筋および大腿二頭筋における剪断力価を有意に低下させる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 食肉の高品質化手法開発の参考データとして用いる。
  • 肥育期間の長短、給与水準、家畜種による影響の考慮が必要である。

具体的データ

図1.維持区と飽食区の筋肉に含まれる水分、粗脂肪、粗蛋白質の比較

 

図2.維持区と飽食区の筋肉内コラーゲンの比較

 

図3.剪断力価の比較

その他

  • 研究課題名:飼養管理条件と筋肉内結合組織構成成分との関係の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:柴 伸弥、常石英作、松崎正敏