沖縄におけるイチゴの年内収穫と2作型組合せによる収量の平準化

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要約

沖縄ではイチゴ「さちのか」の自然分化苗は年明けから収穫が始まる。20日間の短日夜冷処理を行うと12月上中旬から収穫が始まるが、収穫の中休みが生じる。短日夜冷苗と自然分化苗を同面積栽培すると収量の平準化が図れ、鮮度の高いイチゴが供給できる。

  • キーワード:沖縄、イチゴ、「さちのか」、短日夜冷処理、年内収穫、中休み
  • 担当:九州沖縄農研・野菜花き研究部・施設野菜栽培研究室
  • 連絡先:電話0942-43-8271、電子メールyochan@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜栽培生理、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

亜熱帯の沖縄は夏秋期の台風の襲来が多く、また、冬期でも高気温の日があり、これまでイチゴが本格的に栽培されることはなかった。しかし、耐台風性のハウスの出現や果実硬度の高い良食味品種が野菜・茶試(現九州沖縄農研)で育成されるに及んで、沖縄でも安定したイチゴ栽培の可能性がでてきた。そこで、これらのハウスや品種を利用して、年内から販売可能なイチゴの安定生産技術の開発を図る。

成果の内容・特徴

  • 「さちのか」の自然分化苗は11月上旬に花芽分化し、年明けから本格的な収穫が可能となる(表1)。
  • 短日夜冷装置を用いて、「さちのか」の花芽を確実に分化させると、12月上中旬から収穫が可能である(表1)。
  • 収穫期に液肥の追肥を行うと、3t/10aに近い収量が得られる。また、窒素分で20kg/10a程度の基肥を施用すると、0.5t近い年内収量が得られる(表2)。
  • 頂果房の収穫を早めることにより収穫の中休みが生じるが、自然分化苗を組み合わせることにより、収量の平準化が図れる(図1)。
  • 年末年始の果実糖度は12%(Brix)前後と高いが、それ以降は10%前後で推移し、天候によっては8%あたりまで低下することもある(図2)。
  • 沖縄産イチゴは、市販の県外産に比べて糖度が0.5~1.0%ほど低く、酸度は逆に2倍ほど高い。しかし、果実硬度が県外産の1.5倍ほどあり、鮮度の高いイチゴが供給できる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 沖縄本島だけでなく、類似の気候を有する南西諸島地域で活用できる。
  • 育苗は二段階採苗法で行い、育苗期には耐台風性ハウスを用いて、台風により苗の樹勢が低下しないように努める。
  • 短日夜冷処理は15℃、8時間日長で20日程度必要である。

具体的データ

表1 沖縄宜野座村内農家圃場に定植したイチゴの花芽の発育

 

表2 沖縄宜野座村内農家によるイチゴの収量

 

図1 沖縄における短日夜冷苗と自然分化苗の組合せによる日別収量の変化

 

図2 沖縄宜野座村内農家栽培イチゴの糖度変化表3 沖縄県内のスーパーで売られていたイチゴの品質調査

その他

  • 研究課題名:現地導入野菜花きの生産安定化技術の確立
  • 予算区分:地域総合「亜熱帯」
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:荒木陽一、山口博隆、高市益行(野菜茶研)、大和陽一、中島規子、沖村誠、曽根一純、柏尾具俊、
                      西村範夫、登野盛博一*、小橋川共志*、久場峯子*(*沖縄農試園芸支場)
  • 発表論文等:1)荒木陽一(2003) イチゴQ&A栽培技術早わかり 全国農業改良普及協会p216-217