イチゴ苗寄生のミカンキイロアザミウマの温湯浸漬による殺虫法
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要約
イチゴ苗に寄生したミカンキイロアザミウマは47℃の温湯に5分間浸漬処理することにより完全殺虫ができる。ポリ水槽(350l)に投げ込み式ヒーターを組み合わせた装置で簡便に処理ができる。
- キーワード:イチゴ苗、ミカンキイロアザミウマ、温湯浸漬
- 担当:九州沖縄農研・野菜花き研究部・上席研究官、耐暑性野菜生産研究室
- 連絡先:電話0942-43-8271、電子メールkashio@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫、野菜花き、野菜茶業・野菜生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
野菜・花き類の難防除害虫であるミカンキイロアザミウマは、沖縄県では本島の一部地域で侵入が確認されたが、徹底防除により分布の拡大が防止されている。一方、沖縄県のさとうきび産地への導入を目的としてイチゴの栽培技術が開発され、現地での試作が離島も含めて県内各地で始まりつつある。しかし、イチゴは本害虫の好適な寄主であり、苗の移動に伴う分布拡大が懸念される。臭化メチルくん蒸はイチゴ苗に寄生した本害虫の殺虫法として有効であるが、環境保全や簡便性の点で問題がある。そこで、環境にやさしくかつ簡便な殺虫法を開発する。
成果の内容・特徴
- ミカンキイロアザミウマのイチゴの葉の組織内に産下された卵、イチゴ葉上の幼虫および成虫は45℃の温湯に5分以上浸漬処理することで完全に殺虫される。処理温度が47℃の場合は3分以上、50℃の場合は2分以上で同様の効果が得られる(表1)。
- ミカンキイロアザミウマの寄生したイチゴ苗をポットごと45℃または47℃の場合は5分間、50℃の場合は3分間の温湯処理することで完全殺虫ができる(表2)。
- 花芽分化後の‘さちのか’苗は、47℃と50℃の5分間の温湯処理により、未展開葉にわずかな褐変が、53℃の1分の処理により下葉および未展開葉の褐変枯死が認められるが、枯死する株はなく、処理後の生育や出蕾時期への影響はない(表3)。
- イチゴ苗に利用できる温湯処理装置は、市販のポリ水槽、投げ込みヒーターなどを組み合わせることで簡単に作成できる。
成果の活用面・留意点
- 沖縄県内でのイチゴ苗を配布、移動する場合や県外からイチゴ苗を導入する場合のミカンキイロアザミウマの防除に利用できる。
- 350リットルのポリ水槽を利用する場合、1KWの投げ込みヒーター4個が必要である。また、温度を一定に保つために水槽の底に金網を張り、その下に塩ビ管を通して循環ポンプで温湯を循環させる必要がある。コンテナに20株前後のポットを並べて一度に処理できるが、1日当たりの処理株は1000株程度である。
- 処理後の苗は防虫ネットを被覆するなどの方法で隔離状態に置き、ミカンキイロアザミウマの飛来を防止する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:安定生産のための病害虫防除技術の確立-虫害
- 予算区分:地域総合亜熱帯野菜花き
- 研究期間:1998~2002年度
- 研究担当者:柏尾具俊、中島規子(九州沖縄農研)、北村登史雄(現野茶研)
- 発表論文等:1)北村・柏尾(2000)九州農業研究 62:89.