いもち病菌の感染によってイネ体内に誘導されるセジロウンカ抵抗性
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要約
前もっていもち病菌の感染を受けた5~6葉期のイネにおけるセジロウンカの吸汁量と産卵数は、対照である非感染のイネに比べて有意に抑制される。本現象はいもち病菌の感染が引き金となってイネの体内にセジロウンカに対する抵抗性が誘導されることを示唆している。
- キーワード:イネ、いもち病菌、セジロウンカ、吸汁行動抑制作用、産卵行動抑制作用、誘導抵抗性
- 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・害虫管理システム研究室・上席研究官
- 連絡先:電話096-242-7731、電子メールmsatou@affrc.go.jp
- 区分:九州沖縄農業・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
梅雨期に海外より飛来するセジロウンカは6月から8月にかけて九州から東北地方の水田で増殖し、主に栄養成長期のイネを加害する。一方、イネの重要病害であるいもち病(葉いもち)もほぼ時を同じくして多発し、時折、イネに対して“ずり込み症状”と呼ばれる甚大な被害をもたらす。これら二種の重要病害虫がほぼ同時期に発生するにもかかわらず、寄主であるイネを介した種間相互作用についての解析は全く行われてこなかった。ここでは、それら二者間の関係に着目し、前もっていもち病菌の感染を受けたイネにおけるセジロウンカの吸汁行動や産卵行動の変化を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 前もって、いもち病菌(レース番号:007)に感染し発病したイネ(品種:ヒノヒカリ)におけるセジロウンカ雌成虫の吸汁量は、対照である非感染イネでの吸汁量に比べて有意に少ない(図1)。
- いもち病菌に感染したイネと非感染イネをプラスチックケージ内に設置し、セジロウンカ成虫2対をケージ内に放して2日間産卵させた場合、いもち病菌に感染したイネにおける産卵数は、非感染イネでの産卵数と比べて有意に少ない(図2)。
- 以上の結果は、いもち病菌の感染が引き金となって、イネの体内にセジロウンカに対する抵抗性が誘導され、セジロウンカの生存や増殖に負の影響を及ぼしている可能性があることを示唆している。
成果の活用面・留意点
- 葉いもちが発生した場面でのセジロウンカ発生予察技術の改善に貢献し得る新しい現象の発見であり,そのためには圃場レベルでも同様の現象が起きていることを確認する必要がある。
- イネに被害をおよぼす各種の昆虫(トビイロウンカ・ツマグロヨコバイ等)と病原微生物(細菌・ウイルス等)間の相互作用を明らかにする足掛かりとなる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イネを介する昆虫と病原微生物との相互関係の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:佐藤 雅・菅野紘男・中島 隆
- 発表論文等:菅野ら(2002)植物防疫 56(11):463-465